平成16年・研修先を離れて不法残留、日本人女性と婚姻後に不法残留で執行猶予付有罪も在留特別許可(許可第13事例)
2026/08/07
事例の概要
刑事裁判を経てからの判断という点に特徴があります。平成16年に在留特別許可をした28件のうちの第13事例で、本人は東アジア出身の24歳男性。1999年に「研修6月」で入国し、研修先を離れて不法残留となりました。2003年に日本人女性と婚姻しています。2004年に入管法違反(不法残留)で逮捕され、執行猶予付の有罪判決を受けました。結果は「日本人の配偶者等(1年)」でした。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成16年当時、在留特別許可の判断基準は公表されておらず(第一次ガイドラインは平成18年10月策定)、法務大臣の広範な裁量による個別判断でした。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)に置き直した読み方です。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):日本人との法律上の婚姻。
- 消極要素・第2の5:5年前後の不法在留期間。長期化を明示的な消極要素としたのは令和6年改定です。
- 消極要素・第2の6:不法残留と、これによる有罪判決。研修先を離れた経緯も素行の面で消極に評価され得ます。
- 出頭申告(第2の9)には当たりません。端緒は逮捕です。第2の3の素行不良に当たる記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
第3の判断手法の下では、積極要素が消極要素を明らかに上回ることが求められます。本事例で積極に働いたのは、婚姻が成立していたこと、そして有罪判決の罪名が不法残留にとどまり、それ以外の犯罪がないことと読めます。平成17年の不許可第11事例は、「技能」で入国した男性が不正電磁的記録カードの所持で執行猶予付の有罪となった事案で不許可でした。同じ執行猶予でも、罪名の反社会性の程度で評価は大きく異なると考えられます。平成16年分は許可事例のみが公表されており、同年内の対比はできません。
弁護士のコメント
第1に、刑事処分と退去強制事由の関係です。全部執行猶予であれば入管法24条4号リには当たりませんが、不法残留それ自体が退去強制事由ですから手続は進みます。不起訴処分を獲得できていれば消極要素を軽くできた余地はあり、起訴前の段階からの働きかけに意味があります。
第2に、研修先を離れた経緯です。この点をどう説明するかで素行の評価が変わり得ます。認識や事情の有無が問題となる場面では、退去強制事由の判断に故意・過失を要するかという論点にも接します。当事務所が現に争っている領域です。当時は職権発動による恩恵的措置であり、申請手続が新設された現在(令和5年改正入管法・令和6年6月10日施行、入管法50条1項。考慮事情は同条5項)と同じ結論になるとは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成16年に示されたのは許可28件だけで、不許可の事例は公表されていません。網羅性を欠く資料に載っていないことは、結論を左右する事情ではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
不法就労助長罪に問われて退去強制の危機に至った女性の事案では、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得し、さらに退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務を正面から問う訴訟を現に係争中です。
卸業の依頼者が取り込み詐欺の被害に遭った事案では、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、7,500万円の解決金を獲得しました。被害を受けた側の立場からの事件解決にも対応しています。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
同じ執行猶予でも、罪名が何であるかによって入管手続での見通しは変わります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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