平成16年・研修先から離れて不法残留となった男性が定住者の同国人女性と婚姻し出頭申告、在留特別許可|定住者1年(許可第9事例)
2026/08/07
事例の概要
研修生として入国した方が、その後に在留資格を失った型です。平成16年に在留特別許可をした28件のうちの第9事例で、本人は東南アジア出身の40歳男性。1990年に「4-1-6-2」(平成元年改正前の在留資格の表記です)の研修生として入国し、研修先から離れて不法残留となりました。その後、「定住者」で在留する同国人女性と婚姻し、夫婦間に子が1人います。2004年に自ら出頭申告し、結果は「定住者(1年)」でした。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成16年は判断基準が非公表の時期で、第一次ガイドラインの策定は平成18年10月です。当時は法務大臣の広範な裁量による個別判断でした。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)に置き直した読み方です。
- 積極要素・第2の2(2):配偶者が別表第二の「定住者」で、夫婦間に子があること。
- 積極要素・第2の9:自ら出頭申告したこと。子の利益の保護の必要性も令和6年改定で明示されました。
- 消極要素・第2の5:入国から14年前後の不法在留期間。長期化の明示は令和6年改定です。
- 消極要素・第2の6:不法残留(該当する号は条文に当たって確認する必要があります)。研修先から離れた経緯も、素行の面で消極に評価され得ます。
結論を分けた一線はどこか
第3の判断手法は、積極要素が消極要素を明らかに上回るかを見ます。本事例では、配偶者の在留資格が別表第二であり、子があり、自ら出頭したという組合せが効いたと読めます。平成17年の不許可第18事例は、「研修6月」で入国して不法残留となった後に日本人女性と婚姻し出頭したものの、同居の事実も扶助もないとされ不許可でした。入国の経緯が似ていても、家族関係の実態で結論は分かれると考えられます。なお現在は、技能実習先から離れた後に同国人と婚姻した類型が厳しく見られる傾向があります。平成16年分に不許可の公表はありません。
弁護士のコメント
第1に、研修や技能実習の受入先から離れた経緯の説明です。事情によって評価は変わり得ますから、離脱に至った経過を客観的な資料とともに整理しておくことが大切です。この点は退去強制事由の判断における故意・過失の要件をどう考えるかにも関わり、当事務所が現に争点としている領域です。
第2に、配偶者の在留資格の確認と立証です。別表第二であれば積極要素に直接当たりますが、別表第一では構造が異なります。同居の実態と子の養育の記録が中心の資料です。当時は職権発動による恩恵的措置であり、申請手続が新設された現在(令和5年改正入管法・令和6年6月10日施行、入管法50条1項。考慮事情は同条5項)と同じ結論になるとは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成16年について公表されたのは許可の28件にとどまり、不許可の側は一件も示されていません。抜粋にすぎない資料ですから、掲載の有無から結論を先取りすることはできません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
不法就労助長罪に問われて退去強制の危機に至った女性の事案では、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得し、さらに退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務を正面から問う訴訟を現に係争中です。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の徹底した分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。裁判員裁判の対象事件や広く報道された重大事件にも多数対応しています。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
受入先から離れた経緯をどう説明するかが、この類型では大きな比重を占めます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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