平成16年・入管法違反で現行犯逮捕されたが起訴猶予、日本人配偶者との婚姻で在留特別許可|10年前後の不法残留で日本人の配偶者等1年(許可第5事例)
2026/08/07
事例の概要
摘発を受けても、刑事処分が起訴猶予にとどまった場合の一例です。平成16年に在留特別許可をした28件のうちの第5事例で、本人は東南アジア出身の31歳女性。1992年に「短期滞在90日」で入国後に不法残留となり、2002年に日本人男性と婚姻、その後に入管法違反で現行犯逮捕され起訴猶予となっています。結果は「日本人の配偶者等(1年)」でした。逮捕の年は資料では2005年と読み取れますが、年の表記は原典との照合が必要です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成16年は判断基準が非公表の時期で、第一次ガイドラインの策定は平成18年10月です。当時は法務大臣の広範な裁量による個別判断でした。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)に置き直した読み方です。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):日本人との法律上の婚姻。
- 積極要素:刑事処分が起訴猶予にとどまり、刑罰を受けていないこと。
- 消極要素・第2の5:入国から10年前後の不法在留期間。長期化を明示的に消極要素としたのは令和6年改定で、当時の扱いとは異なります。
- 消極要素・第2の6:不法残留(該当する号は条文に当たって確認する必要があります)。
- 出頭申告(第2の9)には当たりません。端緒は現行犯逮捕です。
結論を分けた一線はどこか
第3の判断手法は積極要素が消極要素を明らかに上回るかを見ます。本事例は婚姻が現に成立している点が決め手と読めます。平成17年の不許可第12事例は、摘発で収容された女性が日本人男性と同居していた事案ですが、本国に同国人の夫があり離婚の見通しも立たず、婚姻成立の見通しがないとして不許可でした。法律上の婚姻が成立しているかどうかで結論が分かれると考えられます。平成16年分は不許可事例が公表されておらず、同年内での対比はできません。
弁護士のコメント
第1に、起訴猶予の位置づけです。起訴猶予は不起訴処分の一種で、刑罰を受けていませんから、入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑。全部執行猶予は除外)には当たりません。刑事処分を軽い側に導けたことが、消極要素の重さを抑えた可能性があります。もっとも不法残留それ自体が退去強制事由ですから、手続の進行は避けられません。
第2に、端緒が摘発である事案の備えです。逮捕直後から婚姻の実態を示す資料を集め、違反審査の段階で提出することが要点です。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しません。当時は職権発動による恩恵的措置ですから、申請手続が新設された現在(令和5年改正入管法・令和6年6月10日施行、入管法50条1項。考慮事情は同条5項)と同じ結論になるとは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成16年に公表されたのは許可28件だけで、不許可事例は示されていません。比較の材料が片側しかない資料ですから、似た事情が見当たらないことを重く受け取る必要はありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の徹底した分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。裁判員裁判の対象事件や広く報道された重大事件にも多数対応しています。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議を積み重ね、全件について不起訴処分を獲得しました。身柄を拘束された段階からの積み上げが結論を左右した例です。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
摘発から始まった事案でも、刑事処分を軽い側に導けるかどうかが在留の見通しに響きます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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