平成17年・日系人であることの偽装が判明し夫婦とも在留資格を失い不許可(平成17年不許可第20事例)
2026/08/07
事例の概要
在留資格の基礎となる身分関係が偽りであれば、本人の在留も連動して失われます。平成17年の不許可25件の第20事例です(法務省入国管理局が平成20年12月公表)。本人は東アジア出身の37歳男性。1996年に日系三世である妻の配偶者として「定住者」で入国、更新も受けました。ところが妻が日系人を偽装していたことが判明し、妻は上陸許可を取り消され2004年に退去強制となりました。本人についても偽装があったとして、2005年に在留資格が取り消されました。手続の過程で、妻が日系人でない事実を本人も認めています。刑事処分の記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成17年は第一次ガイドライン策定(平成18年10月)より前で、判断基準は公表されず、法務大臣の広範な裁量による個別判断でした。当てはめは現行ガイドライン(令和6年3月改定)によります。
- 消極要素・第2の3:身分関係を偽って在留資格を得る行為は、在留資格の偽装に関わる素行不良として重く評価されます。
- 消極要素・第2の6:在留資格の取消しにより生じた退去強制事由。具体的にどの号に当たるかは事案ごとに条文に当たって確認する必要があります。
- 積極要素は、家族関係も本邦での生活を支える事情も記載からは見当たりません。
結論を分けた一線はどこか
同じ平成17年の許可第24事例は、日系三世に扶養される子として「定住者」への変更を申請したものの立証が足りず不許可となり不法残留に至った女性が、入管法違反で逮捕されて不起訴となった後、祖父の日本国籍が判明して日系三世と明らかになった事案で、定住者(1年)を得ています。血縁が現に存在したかどうかが、両者を分けたと読めます。
弁護士のコメント
第1に、身分関係の裏付けです。日系を基礎とする在留では、戸籍や出生に関する公的書類の収集が要です。早い段階で本国の資料を取り寄せ、裏付けを確かめておく必要がありました。
第2に、偽装の認識です。配偶者の身分に関する事情をどこまで知っていたかは事案により差があります。退去強制事由の判断に故意や過失を要するかは、当事務所が係争中の論点です。違反調査の段階から認識の内容を記録しておく必要がありました。
また、当時と現在では運用が違います。不法在留期間の長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年3月改定です。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置でした。本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性が積極要素として明示されたのも令和6年改定で、当時評価されなかった子に関する事情には、今なら別の評価が及ぶ余地があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成17年に不許可事例の公表が始まり、判断の輪郭が外から見えました。ただし公表は抜粋です。似た許可例がないことは許可の可能性がないことを意味しません。当事務所は、公表事例に不許可が並ぶ不法就労助長の類型で在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
海外の交流サイトでの侮辱被害については、日本の警察と国際刑事警察機構(インターポール)の捜査により刑事告訴が受理された事例があります。国境をまたぐ事案の窓口としても対応します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、当局との交渉により婚姻と認知を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析することで1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
身分関係の裏付けは、本国の資料をどこまで集められるかで決まります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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