平成17年・技能(コック)で入国した年に偽造カードの所持で有罪となり不許可(平成17年不許可第11事例)
2026/08/07
事例の概要
入国して間もない時期の刑事事件は、積極要素を積む時間がないまま評価されます。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料の、平成17年不許可25件の第11事例です。本人は西南アジア出身の31歳男性。2005年に「技能(コック)1年」で入国しました。同年に、不正に作られた電磁的記録カード、いわゆる偽造テレホンカード等の所持で逮捕され、懲役1年執行猶予3年の判決を受けました(懲役は原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。家族関係や在留を希望する事情は、事例集の記載からは判明しません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成17年は第一次ガイドライン策定(平成18年10月)より前で、基準は公表されず、法務大臣の広範な裁量による個別判断でした。当てはめは現行ガイドライン(令和6年3月改定)によります。
- 消極要素・第2の3:不正に作られたカードの所持は、公的書類に関する第2の3(ウ)と同方向の素行不良と評価され得ます。
- 消極要素・第2の6:有罪の事実。刑は1年で全部執行猶予であり、入管法24条4号リには当たりません。退去強制事由とされた具体的な号は事案ごとに条文に当たって確認する必要があります。
- 積極要素は、家族関係も本邦での生活の蓄積も見当たりません。
結論を分けた一線はどこか
同じ平成17年の許可第5事例は、2004年に入国し「就学」で在留した男性が、通学せず飲食店で就労し資格外活動で摘発された事案です。入国後まもなく違反に至った点は似ています。もっとも同年に日本人の妻と婚姻し、同居の実態と妻の妊娠から婚姻の真摯性が認められ、日本人の配偶者等(1年)を得ました。天秤に載せる積極要素の有無が分かれ目であったと読めます。
弁護士のコメント
第1に、刑事段階です。所持の類型では、そのカードが不正に作られたものだと知っていたかが中心の争点になり得ます。起訴前に認識を争い不起訴処分を獲得できていれば、有罪を前提とする消極要素を生じさせずに済んだ余地があります。
第2に、故意の要件です。退去強制事由の判断に故意や過失を要するかは、当事務所が係争中の論点です。刑事段階から認識を争うことが、後の入管手続での主張の基礎です。
また、当時と現在では運用が違います。不法在留期間の長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年3月改定です。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置でした。本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性が積極要素として明示されたのも令和6年改定で、当時評価されなかった子に関する事情には、今なら別の評価が及ぶ余地があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成17年から不許可事例も公表され、判断の輪郭が見えるようになりました。とはいえ各年25件前後の抜粋です。似た許可例がないことは許可の可能性がないことを意味しません。当事務所は、公表事例に不許可が並ぶ不法就労助長の類型で在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得しました。本人が置かれていた状況を丁寧に描き出す作業が結果につながります。
特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案では、取調べへの対応を徹底し、不当な取調べには抗議を重ねることで、全件について不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
認識を争えるかどうかは、最初の取調べの段階で決まります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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