平成17年・薬物事件で1度は不起訴も再入国後の有罪で不許可|執行猶予でも退去強制事由となる類型(平成17年不許可第9事例)
2026/08/07
事例の概要
薬物に関わる法令違反は、執行猶予が付いても退去強制事由となります。平成17年の不許可25件の第9事例です(法務省入国管理局が平成20年12月公表)。本人は西南アジア出身の47歳男性。1991年に「短期滞在90日」で入国して不法残留となり、1993年に日本人妻と婚姻、1994年に日本国籍の子が生まれました。同年に大麻と覚せい剤に関する事件で逮捕されましたが不起訴となり、1995年に退去強制を受けています。2004年に偽造旅券で不法入国して逮捕され、覚せい剤に関する事実も発覚し、2005年に両罪で懲役3年執行猶予5年の判決です(懲役は原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。その後は妻子との交渉が途絶え、2001年に離婚しています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成17年は第一次ガイドライン策定(平成18年10月)より前で、基準は公表されず、法務大臣の広範な裁量による個別判断でした。当てはめは現行ガイドライン(令和6年3月改定)によります。
- 消極要素・第2の6:入管法24条4号チは薬物関係法令違反による有罪を退去強制事由とし、執行猶予でも該当します。本事例の中心はここにあります。
- 消極要素・第2の3(ウ)に連なる評価:偽造旅券による不法入国。
- 積極要素・第2の2(1):日本国籍の子との家族関係。ただし交渉が途絶し離婚しており、同居監護の実質はありません。
結論を分けた一線はどこか
同じ平成17年の許可第2事例は、永住許可を得ていた女性が覚せい剤取締法違反で懲役1年6月執行猶予3年となりながら、日本国籍の子2人があり、夫が実刑で収監中のため本人が扶養していた事情から、日本人の配偶者等(1年)を得た事案です。薬物という消極要素は共通し、分けたのは家族関係の実質が残っていたかどうかであったと読めます。
弁護士のコメント
第1に、不起訴の意味です。本人は1994年の事件で不起訴処分を得ており、その時点では薬物による有罪が生じていません。ところが2005年の有罪で入管法24条4号チの該当が確定的となりました。2度目でも不起訴を獲得できていれば、この号による退去強制事由を生じさせずに済んだ余地があります。
また、当時と現在では運用が違います。不法在留期間の長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年3月改定です。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置でした。本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性が積極要素として明示されたのも令和6年改定で、当時評価されなかった子に関する事情には、今なら別の評価が及ぶ余地があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成17年分の公表は許可と不許可それぞれ25件で、判断の一部にすぎません。平成17年に不許可事例の公表が始まり輪郭が見えるようになりましたが、それが上限を示すものではありません。当事務所は、公表事例に不許可が並ぶ不法就労助長の類型で在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の徹底した分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得した実績があります。薬物事件では、認識と所持の態様をどこまで丹念に検証できるかが結論を左右します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、当局との交渉により婚姻と認知を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析することで1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
薬物事件では、執行猶予ではなく不起訴を目標に据えることが要点です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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