平成17年・ワーキングホリデー後の不法残留で就労資格の基準に適合せず不許可|母との同居も認められなかった事例(平成17年不許可第4事例)
2026/08/07
事例の概要
在留を希望する理由が就労と家族の同居であっても、その裏付けがなければ結論は動きません。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料の、平成17年不許可25件の第4事例です。本人は北米出身の30歳女性。2003年に「特定活動(ワーキングホリデー)6月」で入国し、その後不法残留となりました。英会話学校での就労と、正規に在留する母との同居を理由に在留を希望しましたが、大学を中退しており実務経験もないため「人文知識・国際業務」の基準に適合せず、母とも同居していないとされています。刑事処分の記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成17年は第一次ガイドライン策定(平成18年10月)より前で、基準は公表されず、法務大臣の広範な裁量による個別判断でした。当てはめは現行ガイドライン(令和6年3月改定)によります。
- 積極要素・第2の9後段:別表第一の一の表又は二の表の在留資格該当性。学歴と実務経験を欠くため当たりません。
- 積極要素・第2の2(2):正規在留の母との家族関係。ただし母の在留資格は記載からは判明せず、同居もありません。
- 消極要素・第2の5及び第2の6:不法在留の継続と退去強制事由該当。具体的にどの号に当たるかは事案ごとに条文に当たって確認する必要があります。
結論を分けた一線はどこか
同じ平成17年の許可第7事例は、日本語学校卒業後に更新を受けず不法残留となった男性が、複数の大学等で芸術系の研究活動やボランティアを続け、大学院での研究継続を希望して出頭申告し、留学(1年)を認められた事案です。在留資格に結びつく活動の実質と、自ら出頭した事情がありました。本事例は主張の裏付けを欠いた点で分かれたと読めます。
弁護士のコメント
第1に、期限の管理です。在留資格の該当性は、期限内に申請してこそ活きます。要件を満たさない見込みであれば、別の資格を含めて早期に方針を立てるほかありません。
第2に、違反審査の段階での立証です。就労先との契約、業務内容、母との同居の実際は、違反調査と違反審査の段階で資料として提出しておく必要がありました。異議申出の段階で初めて主張しても、評価が固まっていることが多くあります。
また、当時と現在では運用が違います。不法在留期間の長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年3月改定です。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置でした。本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性が積極要素として明示されたのも令和6年改定で、当時評価されなかった子に関する事情には、今なら別の評価が及ぶ余地があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例は各年25件前後の抜粋であり、判断の全体像ではありません。平成17年から不許可事例の公表が始まり、線の引かれ方が見えるようになりましたが、傾向にとどまります。当事務所は、公表事例に不許可が並ぶ不法就労助長の類型で在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案では、取調べへの対応を徹底し、不当な取調べには抗議を重ねることで、全件について不起訴処分を獲得しました。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、当局との交渉により婚姻と認知を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析することで1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
資格の裏付けは、期限が来る前に整えておくことが要点です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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