平成17年・日本人の夫がいても長期別居と風営法違反で不許可|不許可事例が初めて公表された年の第1事例(平成17年不許可第1事例)
2026/08/07
事例の概要
日本人の配偶者という身分があっても、それだけで結論は決まりません。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料は、平成17年分から不許可事例を収録しています。行政が自ら許可しなかったと示した最初の事例群の第1事例です。本人は東アジア出身の28歳女性。1998年に日本人の前夫と婚姻し、翌年「日本人の配偶者等」で入国、2000年に離婚して2001年に現在の夫と婚姻しました。2005年に風営法違反で逮捕され罰金50万円に処せられ、供述から売春に関わる業務への従事が認められています。現夫とは2003年から長期に別居し、合理的な理由はないとされました。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成17年は第一次ガイドライン策定(平成18年10月)より前で、基準は公表されず、法務大臣の広範な裁量による個別判断でした。当てはめは現行ガイドライン(令和6年3月改定)によります。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):日本人との法的婚姻。ただし同項は相当期間の共同生活と相互扶助を求めており、長期別居はこれを満たしません。
- 消極要素・第2の3(エ):社会秩序を著しく乱す行為。売春に関わる業務への従事が当たると読めます。
- 消極要素・第2の6:刑は罰金にとどまり、入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑。全部執行猶予は除く)には当たりません。
- 第2の9の出頭申告には当たりません(端緒は逮捕)。
結論を分けた一線はどこか
婚姻が書類の上で続いていても共同生活の実質が失われていた点が、天秤を傾けなかったと読めます。同じ平成17年の許可第21事例は、更新を受けられず不法残留となった女性が別の日本人男性と再婚し、入管法違反で逮捕されたものの起訴猶予となった事案で、同居の実態が確認され婚姻の真摯性が認められて許可されています。形式ではなく実態が見られていたと考えられます。
弁護士のコメント
第1に、刑事段階の目標です。本件の刑は罰金で、入管法24条4号リには当たりません。それでも有罪の事実自体が素行面の消極要素として重く働きました。起訴前に不起訴処分を獲得できていれば、この評価を生じさせずに済んだ余地があります。
また、当時と現在では運用が違います。不法在留期間の長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年3月改定です。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置でした。本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性が積極要素として明示されたのも令和6年改定で、当時評価されなかった子に関する事情には、今なら別の評価が及ぶ余地があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年の抜粋にとどまります。平成17年分は許可・不許可それぞれ25件で、判断のごく一部です。似た許可例が見当たらないことは、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所は、公表事例に不許可が並ぶ不法就労助長の類型で在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得しました。本人が置かれていた状況を丁寧に描き出す作業が結果につながります。
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結語
婚姻の実態は、書類ではなく日々の記録で示すほかありません。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
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