平成17年・妻子が子の教育のため海外に居住し本人だけが不法残留、会社経営の継続と同居の希望で在留特別許可|定住者1年(許可第20事例)
2026/08/07
事例の概要
家族が海外に住み、本人だけが日本に残っていた事例です。平成17年に在留特別許可をした25件のうち第20事例で、西欧出身の49歳男性。1981年に西欧で日本人の妻と婚姻し、長男は日本国籍です。1984年に「4-1-16-1」(平成元年改正前の在留資格の表記です)で入国し、「投資・経営」に変更しました。妻子は子の教育のため西欧に居住し、本人は不法残留です。会社の経営を続け、妻子の帰国後の同居を希望して出頭申告をしています。連絡は電子メールで、妻は年1回帰国していたとされます。結果は「定住者(1年)」です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成17年は第一次ガイドライン(平成18年10月策定)の前で、判断基準は公表されず、法務大臣の広範な裁量に委ねられていました。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)による整理です。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):日本人との法的な婚姻。別居の理由は子の教育で、連絡も継続しています。
- 積極要素・第2の2(1)(ア)に関わる事情:長男が日本国籍を有すること。
- 積極要素・第2の9:自ら出頭申告をしたこと。事業の継続は第2の3の貢献にも関わります。
- 消極要素・第2の5:長期にわたる不法在留期間。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定です。
- 消極要素:現に同居していないこと。婚姻の安定性の評価では不利に働きます。
結論を分けた一線はどこか
平成17年は不許可事例の公表が始まった最初の年です。同年の不許可第15事例は、日系二世として在留していた男性ですが、強盗致傷等で懲役6年の実刑となり、「定住者」の内妻との子2人は本国に帰国し内妻とも3年以上連絡が取れず不許可です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。家族が国外にいる点は共通しますが、連絡が続いているかが違います。別居の理由と関係の継続が分かれ目だと読めます。
弁護士のコメント
第1に、別居の合理性の立証です。同居がない事案は婚姻の実態を疑われやすいところ、本事例では子の教育という理由と、連絡の継続、妻の年1回の帰国が評価されています。連絡と渡航の記録、家計の関係を時系列で示す準備が要点です。
第2に、事業を営む方の資料です。会社の登記や決算の資料、取引の状況、雇用や納税の状況は、地域社会や経済との関わりを示す材料です。刑事処分がない事案では、これらの積み上げが判断の中心になります。注4により令書発付後の事情変更は原則として考慮されません。
当時は職権発動による恩恵的措置でした。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も明示されました(同条5項)。当時許可されたからといって現在も同じとは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集に載るのは各年20件前後です。別居している家族の事案は数が少なく見えますが、判断の限界を示すものではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
卸業の依頼者が取り込み詐欺の被害に遭った事案では、刑事告訴を端緒に相手方を特定し、7,500万円の解決金を獲得しました。事業を営む方の刑事・民事の双方に対応しています。
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結語
別居の事案では、離れていても家族であり続けた事実を記録で示すことが要点です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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