平成17年・過去に退去強制歴のある女性が自己名義の旅券で再来日、日本人夫との婚姻で在留特別許可|出頭申告して日本人の配偶者等1年(許可第8事例)
2026/08/07
事例の概要
一度退去強制を受けた方の再度の在留が問われた事例です。平成17年に在留特別許可をした25件のうち第8事例で、東南アジア出身の46歳女性。1988年に他人名義の旅券で不法入国し、1990年に退去強制を受けています。2001年には自己名義の旅券で「短期滞在90日」として入国し、その後不法残留となりました。2003年に日本人の夫と婚姻し、2004年に出頭申告をしています。過去の退去強制歴はあるものの、同居の実態が確認され、婚姻は真摯と認められました。結果は「日本人の配偶者等(1年)」です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当時は第一次ガイドライン(平成18年10月策定)より前で、基準は公表されておらず、判断は法務大臣の広範な裁量の下にありました。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)に当てはめた整理です。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):日本人との法的な婚姻。同居の実態が確認されています。
- 積極要素・第2の9:自ら出頭申告をしたこと。
- 消極要素・被退去強制歴:1回の退去強制歴があります。事例集でも特記されています。
- 消極要素・第2の5:再入国からの不法在留期間は3年前後です。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定です。
- 消極要素・第2の6:不法残留。刑事処分の記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
不許可事例の公表はこの年から始まり、同年内の対比ができます。不許可第5事例は、2003年に出頭して退去強制を受けた後、同じ年に他人名義の旅券で再び不法入国し、翌年に日本人女性と婚姻して出頭申告をしていますが、同居の事実がなく供述にも矛盾があって不許可でした。退去強制歴という消極要素が同じでも、再入国の態様と婚姻の実態が結論を分けたと読めます。
弁護士のコメント
第1に、再入国の態様です。本事例では自己名義の旅券で入国しており、他人名義の旅券を用いた不許可第5事例とは、出入国在留管理の根幹に触れる度合いが違います。過去に退去強制を受けた方の相談では、その後どのように入国したかを最初に確認する必要があります。
第2に、婚姻の実態の立証です。同居の開始時期、生活費の負担、双方の親族との関係を示す資料が中心になります。過去の退去強制歴があるほど、婚姻の実態に関する立証の水準は高く求められると考えられます。注4により令書発付後の事情変更は原則として考慮されません。
当時の在留特別許可は申請できるものではなく、職権発動による恩恵的措置でした。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も明示されています(同条5項)。当時の結論をそのまま今日に当てはめることはできません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋です。退去強制歴がある方の許可例が少なく見えるとしても、それが可能性の限界を示すものではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻・認知が未了で一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析することで1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
特殊詐欺の出し子とされた20代の女性については、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
退去強制歴がある事案では、その後の入国と生活の経緯を正確に整理することが出発点になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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