平成17年・偽造旅券での不法入国と窃盗で執行猶予付有罪も在留特別許可|日本人の夫が所在不明の中で子を監護養育した女性に定住者1年(許可第3事例)
2026/08/07
事例の概要
不法入国と窃盗が重なっても、子の監護養育が結論を支えた事例です。平成17年に在留特別許可をした25件のうち第3事例で、東南アジア出身の35歳女性です。1994年に偽造旅券で不法入国し、1996年に日本人男性との子を出産、2003年に婚姻して夫が認知し、子は「日本人の配偶者等」となりました。2005年に窃盗(万引き)で逮捕され、入管法違反と窃盗罪で懲役2年8月執行猶予3年(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。夫は認知の後に所在不明となり、本人が子を監護養育して反省しているとされます。結果は「定住者(1年)」です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成17年は第一次ガイドライン(平成18年10月策定)の前で、判断基準は公表されず、法務大臣の広範な裁量に委ねられていました。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)による整理です。
- 積極要素・第2の2(1)(イ):認知で日本国籍を有する実子を相当期間同居して監護養育していること。
- 積極要素:家族とともに生活する子の利益の保護の必要性(令和6年改定で明示)。
- 消極要素・第2の5:入国から11年前後の不法在留期間。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定です。
- 消極要素・第2の6:偽造旅券による不法入国と窃盗。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、全部執行猶予は除外されます。
結論を分けた一線はどこか
不許可事例の公表はこの年から始まり、同年内の比較ができます。不許可第8事例は、日本国籍の子の監護を理由に「定住者」を得ていた女性ですが、偽装結婚のあっせんに関わる公正証書原本不実記載罪で懲役2年執行猶予4年となり、窃盗罪の前科もあって不許可です。万引きと偽装結婚のあっせんでは、出入国在留管理の根幹に関わる度合いが違います。子の監護が同じでも、違反の性質が結論を分けたと読めます。
弁護士のコメント
第1に、刑事段階の目標設定です。被害の小さい万引き事案では、被害弁償と示談により不起訴処分を得られる余地があります。入管法違反と併せて有罪となれば、その事実自体が消極要素として残ります。不起訴なら消極要素を一つ減らせた可能性があります。
第2に、認知と監護の立証です。認知の届出関係の資料、子の在学と生活の状況、家計、夫が所在不明である事情の裏付けが中心です。違反審査の段階から提出しておくべき資料です。
当時は職権発動による恩恵的措置でした。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も明示されました(同条5項)。当時許可されたからといって現在も同じ結論になるとは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
この事例集は各年20件前後の抜粋で、許可事案を網羅したものではありません。刑事処分を受けた事案の許可例が見当たらないとしても、結論は決まりません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
特殊詐欺の出し子とされた20代の女性について、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得しました。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻・認知が未了で一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
比較的軽微な財産犯であっても、有罪となるかどうかが後の入管手続に残ります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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