平成18年・重大事件で懲役4年、判決後の婚姻届も認められず不許可(不許可第25事例)
2026/08/07
事例の概要
判決の後に婚姻届を出しても、それだけで評価は変わりません。平成18年に在留特別許可をしなかった25件(法務省入国管理局が平成20年12月公表)の第25事例です。東アジア出身の24歳女性。2001年に「就学6月」で入国して日本語学校に通学していましたが、2003年に強盗致傷、強姦、窃盗により懲役4年の判決を受けて服役します(懲役は原典表記で、現行法では拘禁刑に相当します)。判決の後に日本人男性と婚姻届を出したものの、在留状況が悪質で同居歴がなく、逮捕当時は同国人の恋人と同居していたことが判明したとされています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。平成18年10月に第一次ガイドラインが策定され、この年から評価要素が対外的に示されました。本事例が策定の前後どちらの判断かは資料から特定できません。
- 消極要素・第2の6:退去強制の理由となった事実の反社会性。入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑)に関わります。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):日本人との婚姻。もっとも同居歴がなく、相当期間の共同生活という要件を満たしません。届出の時期も判決の後です。
- 第2の5の不法在留期間はありません。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定です。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。同じ平成18年の許可第18事例も、不法入国で懲役2年6月執行猶予4年を受けた後に婚姻が成立した事案ですが、婚姻の信憑性が認められて「日本人の配偶者等(1年)」が許可されています。判決の後の婚姻であること自体が問題なのではなく、共同生活の裏づけの有無と罪の重さが分かれ目と読めます。
弁護士のコメント
第1に、刑事段階の目標です。実刑の期間が長いほど、在留の判断に強く残ります。仮に不起訴処分を獲得できていれば、退去強制事由該当性そのものを生じさせずに済んだ余地がありました。事実関係に争いがある事案では、捜査の初期から主張を組み立てる必要があります。現行法でも、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた者は、人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がある場合に限り許可されます(入管法50条1項ただし書)。
第2に、時期の問題と現在の枠組みです。ガイドライン注4は、令書発付後の事情変更を原則として考慮しないとします。事情は発付前に整えておく必要があります。また令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置です。令和6年改定では「本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性」も明示され、子を養育している方であれば当時と異なる主張ができます。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
ここまで25件を見てきましたが、これは各年20件台の抜粋にすぎません。重い罪名の事例が並んでも、それが個々の見通しを決めるわけではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者の事案では、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。重大事件でも、事実を一つずつ検証する作業が結論を動かすことがあります。
観光目的で来日した相談者が在留資格を失った事案では、当局の過去の許可事例を分析し、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
在留のための準備は、判決を待ってからでは遅くなります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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