平成18年・日系人と偽った不法入国と逮捕後の婚姻で不許可|永住者と婚姻しても申立てに齟齬があった事例(不許可第24事例)
2026/08/07
事例の概要
永住者と婚姻していれば有利になるはずの場面で、なぜ結論が変わらなかったのか。平成18年に在留特別許可をしなかった25件(法務省入国管理局が平成20年12月公表)の第24事例です。南米出身の19歳男性。2001年に日系人と偽って不法入国し、更新申請が不許可となった後は所在不明となっていました。2006年に入管法違反で逮捕され起訴猶予となっています。逮捕後に同国人の「永住者」との婚姻が成立しましたが、夫婦間の申立てに著しい齟齬があり、相互の協力扶助も認められないと判断されました。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。平成18年10月に第一次ガイドラインが策定され、この年から判断で考慮される事情が公表されました。本事例が策定の前後どちらの判断かは資料から特定できません。
- 積極要素・第2の2(2):別表第二の在留資格である「永住者」との家族関係。本来は特に考慮される積極要素ですが、申立ての齟齬により婚姻の実態が認められていません。
- 消極要素・第2の6:日系人と偽った入国という、在留資格の前提そのものに関わる事情。該当号は条文で確認が必要です。
- 消極要素・第2の5:更新不許可の後の所在不明を含む在留期間。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定であり、当時は積極にも消極にもなり得るとされていました。手続から離れていた点も重く働きます。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。同じ平成18年の許可第10事例は、本邦で出生した後に在留資格取得の手続がされず不法残留となった9歳男児について、実父母が所在不明の中で日本人夫婦が育て、出頭申告のうえ養子縁組が成立した事案で、「定住者(1年)」が許可されました。人と人との結びつきが法的にも客観的にも裏づけられているかどうかが、一線と読めます。
弁護士のコメント
第1に、逮捕後の婚姻の見られ方です。本事例は起訴猶予、つまり不起訴処分で、有罪判決という消極要素は生じていません。それでも不許可となった理由は、婚姻の成立時期と内容にあると読めます。手続が始まってからの婚姻は、それ自体が否定されるわけではありませんが、二人の説明が食い違えば信憑性は失われます。生活の実際を共通の認識として整理し、資料で裏づけることが不可欠です。
第2に、当時と現在の違いです。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で在留特別許可に申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置です。申請の仕組みがある現在は、積極要素の立証を自ら組み立てる場面が増えました。令和6年改定では「本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性」も明示され、子がいる事案の評価は当時と異なります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
この資料は各年20件台の抜粋にすぎません。似た経緯で不許可が並んでいても、それは同じ立場の方の結論を意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻・認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、当局の過去の許可事例を分析して1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、取調べ対応を徹底し、全件について不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
婚姻の中身は、二人の説明が一致してはじめて伝わります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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