平成18年・家族滞在での長期稼働が資格外活動とされ不許可|報酬を本国へ送金していた事例(不許可第22事例)
2026/08/07
事例の概要
家族滞在の資格で働き続けた場合、どこで線を越えるのか。平成18年に在留特別許可をしなかった25件(法務省入国管理局が平成20年12月公表)の第22事例です。東アジア出身の34歳女性。2003年、留学中の同国人の夫と同居するため「家族滞在2年」で入国しました。生活費と本国の両親や子への送金のため、2004年から約1年8か月マッサージ店で稼働し、報酬200万円を本国へ送金しました。専ら報酬を受ける活動と認定された事例で、刑事処分の記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。平成18年10月に第一次ガイドラインが策定され、この年から考慮要素が外に示されました。本事例が策定の前後どちらの判断かは資料から特定できません。
- 消極要素・第2の6:与えられた在留資格の範囲を超え、専ら報酬を受ける活動を継続したこと。該当号は条文で確認が必要です。期間の長さと送金額が、活動の主従を判断する材料になったと読めます。
- 積極要素・第2の2(2)が特に考慮するのは別表第二の在留資格を持つ者との家族関係です。夫の資格は「留学」で別表第一であり、この積極要素には直接当たりません。
- 第2の5の不法在留期間はありません。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定です。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。同じ平成18年の許可第2事例は、不法残留の母子について、母の婚姻手続が未了でも、子が難病で入院中で本国の医療事情から本邦での治療継続が必要と認められ、摘発という端緒でも母子ともに「定住者(1年)」が許可された事案です。日本で暮らす必要性が人道の観点から具体的に示せるかどうかが、天秤を分けたと読めます。
弁護士のコメント
刑事処分の記載がない事例ですので、手続面を中心に申し上げます。
第1に、働く前の確認です。家族滞在の在留資格でも、資格外活動許可の範囲内であれば就労できます。線を越えるかどうかは、時間や収入の全体に照らして本来の活動が主かどうかで判断されます。長期にわたり一つの店で専従すれば、この点が問題になります。働き方を変える前に許可の範囲を確認するのが確実です。
第2に、子の利益の位置づけです。令和6年改定で「本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性」が積極要素として明示されました。もっともこれは、日本で家族とともに暮らす子の利益を指します。本事例の送金の相手は本国の家族であり、この要素に直接は当たりません。他方、日本で子を養育する方であれば、当時より主張の柱を増やせます。あわせて令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
この資料に載るのは各年20件台です。資格外活動で不許可が並ぶことは、同じ事情の方に道がないという意味ではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
不法就労助長罪に問われ退去強制の危機に直面した女性の事案では、退去強制事由に故意・過失は不要とする従来の実務を問い直すべく、責任主義の射程を争う訴訟を継続しています。この事件では在留特別許可を獲得したうえで、違反認定処分の取消しを求めています。
観光目的で来日した相談者が在留資格を失った事案では、当局の過去の許可事例を分析し、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
働き方が変わるときこそ、在留資格の範囲を確かめる機会です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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