平成18年・婚姻と出頭申告の後も泊込み稼働で別居、不許可|週の大半を自宅外で過ごしていた事例(不許可第21事例)
2026/08/07
事例の概要
働き方の都合で家に帰れない生活は、婚姻の実態にどう響くのか。平成18年に在留特別許可をしなかった25件(法務省入国管理局が平成20年12月公表)の第21事例です。東アジア出身の40歳女性。2000年に「短期滞在15日」で入国した後に不法残留となり、ホステスとして稼働。2004年に日本人男性と婚姻して出頭申告しましたが、調査で別居が判明し、合理的な理由がないと判断されました。本人も、自宅から離れた場所で週の大半を泊まり込みで稼働していたことを認めています。刑事処分の記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。平成18年10月に第一次ガイドラインが策定され、この年から評価要素が公表されました。本事例が策定の前後どちらかは資料から特定できません。
- 積極要素・第2の9:自ら出頭したこと。これ自体は評価される事情です。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):日本人との婚姻。ただし相当期間の共同生活と相互の扶助が求められ、週の大半を別の場所で過ごす生活では、この要件を満たしにくくなります。
- 消極要素・第2の5・第2の6:不法残留とその期間。該当号は条文で確認が必要です。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定で、当時は積極にも消極にもなり得るとされていました。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。同じ平成18年の許可第8事例は、日本人男性と交際した母について、同居はないものの生活費の支援を受け続け、子も認知されて2004年に出頭申告した事案です。母が稼働し、義務教育を終えた子も生計を支えている点が評価され、母子ともに許可されました。同居がないこと自体ではなく、扶助関係と家族の実態が示せるかどうかが一線と読めます。
弁護士のコメント
刑事処分の記載がない事例ですので、初動と立証を中心に申し上げます。
第1に、別居の説明の組み立てです。就労の形態上、離れて暮らす場合はあります。その際は、勤務の実情、生活費のやり取り、休日の生活の様子など、扶助関係が続いていることを客観的に示す資料を揃えます。本人の説明が別居の理由を裏づけない形になると、婚姻全体の信憑性が疑われます。
第2に、違反審査までの準備と現在の枠組みです。手続は違反調査、違反審査、口頭審理、異議申出と進み、在留特別許可は最後の判断です。令書発付後の事情変更は原則として考慮されません(注4)。なお令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置です。令和6年改定では「本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性」も積極要素として明示され、子がいる場合の評価は当時と異なります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例は各年20件台の抜粋です。別居の指摘で不許可となった例が並んでも、同じ働き方の方の結論は決まりません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻・認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、脅迫的な状況や犯意の不存在などを主張し、不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
離れて暮らす事情があるなら、その理由と支え合いの記録を残しておくことが要点です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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