平成18年・出頭申告の後に所在不明となり不許可|高齢でも本国に実子がいた事例(不許可第20事例)
2026/08/07
事例の概要
出頭申告をしても、その後に手続から離れてしまえば評価は残りません。平成18年に在留特別許可をしなかった25件(法務省入国管理局が平成20年12月公表)の第20事例です。東アジア出身の69歳女性。1992年に「短期滞在15日」で入国した後に不法残留となりました。1996年に出頭申告をしましたが、その後に所在不明となり、2002年に入管法違反(不法残留)で逮捕され起訴猶予となっています。本国に実子がおり、本邦での在留を認めるべき理由が特に認められないと判断されました。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。平成18年10月に第一次ガイドラインが策定され、この年から判断で考慮される要素が公にされました。本事例が策定の前後どちらかは資料から特定できません。
- 積極要素・第2の9:出頭申告。ただし、その後に所在不明となったことで、この評価は事実上失われたと読めます。
- 消極要素・第2の5:入国から10年を超える不法在留期間。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定であり、当時は積極にも消極にもなり得るとされていました。
- 消極要素・第2の6:不法残留。該当号は条文で確認が必要です。人道上の配慮(第2の7)に当たる記載はなく、本国に実子がいる点は帰国後の生活の基盤があると評価される事情です。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。同じ平成18年の許可第13事例は、1972年に不法入国して以来日本で暮らしてきた65歳男性が2005年に出頭申告した事案で、相当期間の本邦生活、本国に身寄りがないこと、生計の安定が認められて「定住者(1年)」が許可されました。高齢という事情そのものではなく、本国に生活の支えがあるかどうか、そして手続に誠実に向き合ったかどうかが分かれ目と読めます。
弁護士のコメント
第1に、起訴猶予の位置づけと初動です。本事例は起訴猶予、すなわち不起訴処分ですから、有罪判決という消極要素は生じていません。それでも不許可となった背景には、出頭申告の後に所在不明となった経緯があると読めます。現在の制度では、仮放免や監理措置の条件に反する行為が消極要素として明記されており、手続からの離脱は同じ方向で評価されます。出頭は、その後の連絡と生活の見通しを確保したうえで行うべきものです。
第2に、当時と現在の違いです。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で在留特別許可に申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置です。令和6年改定では「本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性」も積極要素として明示され、日本で家族と暮らしている方であれば、当時とは別の主張ができます。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
この資料は各年20件台の抜粋にすぎません。高齢の方の事例が不許可で並んでいても、それが一般的な結論を示すわけではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、当局の過去の許可事例を分析することで、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、取調べ対応を徹底し、全件について不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
出頭した後も手続に誠実に向き合い続けることが、評価を保つ条件になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------