平成18年・不正に取得した日本旅券で出入国を繰り返し不許可|退去強制の後に再入国した事例(不許可第19事例)
2026/08/07
事例の概要
旅券に関わる不正は、在留の判断で最も重く扱われます。平成18年に在留特別許可をしなかった25件(法務省入国管理局が平成20年12月公表)の第19事例です。東アジア出身の48歳女性。1998年、不法残留中に日本人男性と婚姻し、信憑性が認められて在留特別許可(「日本人の配偶者等」)を得ました。しかしその後離婚して再び不法残留となり、退去強制を受けています。さらに船舶で不法入国し、不正に取得した日本旅券で出入国を繰り返して、2004年に懲役2年の判決を受けました(懲役は原典表記で、現行法では拘禁刑に相当します)。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。平成18年10月に第一次ガイドラインが策定され、この年から判断で考慮される事情が公表されました。本事例が策定の前後どちらかは資料から特定できません。
- 消極要素・第2の3:公的書類の不正に関わる行為。同項(ウ)は在留カード等の偽変造・不正受交付・行使・所持を挙げており、旅券の不正取得と行使もこの趣旨で最も重く評価されると読めます。
- 消極要素・第2の6:資料に執行猶予の記載はなく、全部執行猶予でなければ入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑)に関わります。不法入国の該当号は条文で確認が必要です。
- 消極要素・第2の5:退去強制の後の再度の不法在留。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定です。積極要素として挙げられる家族関係の記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。同じ平成18年の許可第21事例は、1963年頃に不法入国したとされる68歳男性が2005年に自ら出頭申告し、亡くなった内縁の妻との実子と称する日本人と同居していた事案です。親子関係の客観的な証拠はないものの、その日本人が引き続き面倒を見るとされ、「定住者(1年)」が許可されました。同じ長期の不法入国でも、自ら申告したか、公的書類の不正を重ねたかが分かれ目と読めます。
弁護士のコメント
第1に、刑事段階の目標です。旅券に関する事件では、不正について認識していたか、誰が手配したかが争点になり得ます。仮に不起訴処分を獲得できていれば、素行面で最も重い評価そのものを生じさせずに済んだ余地がありました。退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする運用は、松村弁護士が現に係争中の論点です。
第2に、当時と現在の違いです。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置です。令和6年改定では「本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性」も積極要素として明示され、家族の事情を評価する枠組み自体が当時とは異なります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例は各年20件台の抜粋です。旅券関係の事件で許可例が見当たらないことは、結論が一律に決まっていることを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者の事案では、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。書類や物の来歴が争点になる事件では、証拠を一つずつ検証する作業が結論を動かします。
観光目的で来日した相談者が在留資格を失った事案では、公的書類がほとんど存在しない状況でも有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
書類の不正が絡む事案では、認識と経緯の説明が出発点になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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