平成18年・出頭申告して婚姻もしたが同居の事実が認められず不許可(不許可第14事例)
2026/08/07
事例の概要
自ら出頭して婚姻もしていた。それでも許可されなかったのはなぜか。平成18年に在留特別許可をしなかった25件(法務省入国管理局が平成20年12月公表)の第14事例です。東南アジア出身の33歳女性。1997年に稼働目的で不法入国し、2005年に日本人男性と婚姻して出頭申告しました。入管法違反で逮捕されたものの起訴猶予となっています。しかし調査により、夫の生活の本拠が供述とは異なる実家にあることが分かり、同居の事実がないと判断されました。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。平成18年10月に第一次ガイドラインが策定され、この年から判断で考慮される要素が公にされました。本事例が策定の前後どちらの判断かは資料から特定できません。
- 積極要素・第2の9:自ら出入国在留管理官署に出頭したこと。これは本来評価される事情です。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):日本人との婚姻。ただし同居の事実が認められず、相当期間の共同生活という要件を満たしません。
- 消極要素・第2の5・第2の6:不法入国後、約8年に及ぶ在留とその該当号は条文で確認が必要です。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定で、当時は積極にも消極にもなり得るとされていました。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。同じ平成18年の許可第12事例は、不法残留の女性が稼働先の日本人男性と交際して子を出産し、出頭申告した後に婚姻が成立した事案です。子が胎児認知により日本国籍を取得しており、「日本人の配偶者等(1年)」が許可されました。出頭申告という同じ行動をとっても、共同生活と子という中身が伴うかどうかが一線と読めます。
弁護士のコメント
第1に、供述と客観的事実の一致です。本事例では起訴猶予により有罪判決は生じていません。それにもかかわらず不許可となった決め手は、同居についての説明が調査結果と食い違った点にあると読めます。事実に反する説明は、他の主張の信用性まで損ないます。出頭申告は、住まいと生活の実際を正確に説明できる状態にしてから行うべきものです。
第2に、当時と現在の違いです。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で在留特別許可に申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置です。申請手続がある現在は、積極要素の立証を申請する側で組み立てる場面が増えました。令和6年改定では「本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性」も積極要素として明示され、子を養育している方であれば主張の柱を増やせます。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
この資料が示すのは各年20件台の抜粋です。出頭申告しても不許可となった例があることは、出頭申告に意味がないという結論にはなりません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻・認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、当局の過去の許可事例を分析して1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、脅迫的な状況や犯意の不存在などを総合的に主張し、不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
出頭申告は、準備を整えてから行うことでこそ力を持ちます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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