平成18年・勤務先の倒産から不法残留、退去強制歴が判明して不許可|日本人女性と婚姻していた事例(不許可第13事例)
2026/08/07
事例の概要
自分の責めによらない事情で資格を失った場合も、過去の経歴が結論を左右します。平成18年に在留特別許可をしなかった25件(法務省入国管理局が平成20年12月公表)の第13事例です。南アジア出身の41歳男性。1996年に「技能1年」で入国し、コックとして稼働していましたが、勤務先が倒産して不法残留となりました。その後日本人女性と婚姻しましたが、入管法違反で逮捕され起訴猶予となり、手続の中で過去の退去強制歴が判明しました。当該女性は離婚を考えているとされています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。平成18年10月は第一次ガイドラインが策定された月であり、判断の考慮要素がこの年から公にされました。本事例が策定の前後どちらかは資料から特定できません。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):日本人との婚姻。ただし配偶者が離婚を考えている状況では、安定かつ成熟した婚姻とは評価されません。
- 消極要素・第2の6:不法残留と、過去に退去強制を受けた経歴。該当号は条文で確認が必要です。
- 消極要素・第2の5:不法在留期間。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定であり、当時は積極にも消極にもなり得るとされていました。端緒は逮捕で、第2の9の出頭申告には当たりません。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。同じ平成18年の許可第9事例は、退去強制を受けた女性が本国での氏名変更を経て入国したものの、変更申請の際に上陸拒否期間中の入国を自ら申告し、同居の事実と婚姻の信憑性が認められて「日本人の配偶者等」が許可された事案です。退去強制歴があっても、自ら明かす姿勢と現に続く婚姻があれば結論は変わり得たと読めます。
弁護士のコメント
第1に、起訴猶予の意味と限界です。本事例は起訴猶予、つまり不起訴処分であり、有罪判決という重い消極要素は生じていません。それでも不許可となったのは、退去強制歴と婚姻の不安定さが残ったためと読めます。不起訴の獲得は前提であって、それだけで結論は決まりません。
第2に、経歴の開示と初動です。過去の退去強制歴は、手続の中で必ず明らかになります。隠して後から判明すれば、供述の信用性そのものが損なわれます。自ら申告し、その後の生活の変化を示す組み立てが有効です。勤務先の倒産のように帰責性の低い経緯であれば、資格を失う前の段階で相談し、在留資格の変更等を検討する余地もありました。
第3に、当時との違いです。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置です。令和6年改定では子の利益の保護の必要性も明示され、家族の事情の評価は当時と同じ枠組みではありません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例は各年20件台の抜粋です。退去強制歴があれば不許可が並ぶという見方は、この抜粋から受ける印象にすぎません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻・認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況でも有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、取調べ対応を徹底し、全件について不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
在留資格を失いそうなときは、失う前にご相談いただくのが最善です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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