平成18年・麻薬特例法違反で懲役1年1月、妻子と別居して不許可|一度は在留特別許可を得ていた事例(不許可第12事例)
2026/08/07
事例の概要
薬物事件は家族がいても覆りにくい類型です。平成18年に在留特別許可をしなかった25件(法務省入国管理局が平成20年12月公表)の第12事例です。西欧出身の26歳男性。2004年に不法残留となりましたが、入国前から日本人女性と婚姻しており、信憑性が認められて在留特別許可(「日本人の配偶者等」)を得ています。2005年に麻薬特例法違反で懲役1年1月の判決を受けます(懲役は原典表記で、現行法では拘禁刑に相当します)。逮捕前に妻子と別居して他の日本人女性と同棲しており、夫婦関係は実質的に破綻していたとされました。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。平成18年10月に第一次ガイドラインが策定され、それまで内部にとどまっていた考慮要素が公表されました。本事例が策定の前後どちらかは判明しません。
- 消極要素・第2の6:入管法24条4号チ(薬物関係法令違反による有罪。執行猶予でも該当)に関わります。資料に執行猶予の記載はなく、全部執行猶予でなければ同4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑)にも関わります。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):婚姻はありますが、別居により安定かつ成熟した婚姻とは評価されません。
- 消極要素・第2の5:不法残留の期間。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定で、当時は積極にも消極にもなり得るとされていました。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。同じ平成18年の許可第5事例は、他人名義旅券で不法入国した男性が日本人女性と交際して子が生まれ、女性の家族とも同居し、逮捕後に婚姻届を出した事案で、同居の事実と胎児認知が認められ「日本人の配偶者等」が許可されました。同じ「婚姻あり」でも、生活が現に一つであるかどうかが分かれ目と読めます。
弁護士のコメント
第1に、薬物事件の特殊性です。入管法24条4号チは執行猶予でも退去強制事由となるため、在留を保つ現実的な道は不起訴処分の獲得です。仮に不起訴を得られていれば、退去強制事由該当性そのものを生じさせずに済んだ余地がありました。薬物の認識や関与の程度に争点があるなら、刑事段階で徹底して争う意味があります。退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする運用は、松村弁護士が現に係争中です。
第2に、子の位置づけの変化です。令和6年改定で「本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性」が積極要素として明示されました。当時は夫婦関係が破綻すると子の事情も一体で評価されにくかったのですが、現在は子の側の利益として独立に主張できます。あわせて令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
この資料に載るのは各年20件台です。薬物事件の許可例が見当たらないことは、結論が一律に決まっていることを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者の事案では、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。薬物事件では、認識の有無と関与の程度を最初から争う姿勢が不可欠です。
観光目的で来日した相談者が在留資格を失った事案では、当局の過去の許可事例を分析し、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
薬物事件は、判決の種類にかかわらず在留に直結します。初動が要点です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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