平成18年・強盗致傷などで懲役6年、定住者でも不許可|家族が日本にいても在留特別許可されなかった事例(不許可第10事例)
2026/08/07
事例の概要
日系人として正規に在留していても、重大事件があれば在留は維持できません。平成18年に在留特別許可をしなかった25件(法務省入国管理局が平成20年12月公表)の第10事例です。南米出身の29歳男性。1995年に「短期滞在90日」で入国した後、日系三世として「定住者」に変更し、日系二世の父や兄とともに日本で在留していました。しかし強盗致傷、銃刀法違反、窃盗、覚せい剤取締法違反により懲役6年の判決を受けています(懲役は原典表記で、現行法では拘禁刑に相当します)。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。平成18年10月に第一次ガイドラインが策定され、この年から積極要素・消極要素が公にされました。本事例が策定の前後どちらの判断かは資料から特定できません。
- 消極要素・第2の6:入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑)と同4号チ(薬物関係法令違反による有罪。執行猶予でも該当)の双方に関わります。反社会性の程度が特に重い部分です。
- 積極要素:父や兄が日本に在留していますが、第2の2(1)(2)は配偶者・実子との関係を中心に据えており、成人の兄弟や親との同居のみでは特に考慮する積極要素に届きにくい構造です。
- 第2の5の不法在留期間はありません。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定です。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。同じ平成18年の許可第11事例は、不法残留の男性が「定住者」の同国人女性と同居・婚姻し、入管法違反での逮捕も起訴猶予にとどまったため、婚姻の信憑性が認められて「定住者(1年)」が許可された事案です。同じ日系の系譜をたどっても、罪名と量刑の重さが天秤を決めたと読めます。
弁護士のコメント
第1に、刑事段階の目標です。重大事件では不起訴が容易でない場面もありますが、罪名と量刑の一つ一つがその後の在留判断に残ります。仮に一部の事実について不起訴処分を獲得できていれば、退去強制事由に該当する範囲を狭められた余地はありました。とくに薬物は執行猶予でも入管法24条4号チに当たるため、罪名を減らす活動には固有の意味があります。
第2に、当時と現在の違いです。現行法では、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた者について、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がある場合に限り許可されます(入管法50条1項ただし書)。あわせて申請手続が新設され(同条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置でした。さらに令和6年改定で子の利益の保護の必要性が積極要素として明示され、実子を養育している方であれば、当時よりも主張できる筋道は増えています。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例は各年20件台にとどまります。重大事件の類型に許可例が見えないことは、あらゆる事案で結論が決まっていることを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者の事案では、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。重い罪名がついた事件でも、事実を一つずつ検証する作業が結果を変えることがあります。
当事務所は、裁判員裁判対象事件や国際的に報道された事件にも多数対応してきました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
罪名の数と量刑は、刑事裁判の後も入管の判断の中に残り続けます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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