平成18年・売春防止法違反と2年間の別居で不許可|日本人男性と再婚していた女性の事例(不許可第9事例)
2026/08/07
事例の概要
再婚した日本人配偶者がいても、別居が続いていればどうなるか。平成18年に在留特別許可をしなかった25件(法務省入国管理局が平成20年12月公表)の第9事例です。東アジア出身の37歳女性。1999年、本国で婚姻した日本人男性と同居するため「日本人の配偶者等1年」で入国し、2002年に離婚して別の日本人男性と婚姻しました。しかし2006年に売春防止法違反で懲役6月執行猶予3年の判決を受け、現在の夫とは直近2年間同居しておらず、その別居に合理的な理由もないとされました(懲役は原典表記で、現行法では拘禁刑に相当します)。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。平成18年10月に第一次ガイドラインが策定され、この年から判断の枠組みが外に示されました。本事例が策定の前後どちらの判断かは資料から特定できません。
- 消極要素・第2の3(エ):社会秩序を著しく乱す行為。売春防止法違反が正面から当たります。
- 消極要素・第2の6:退去強制の理由となった事実。全部執行猶予のため入管法24条4号リには当たらず、該当号は条文で確認が必要です。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):日本人との婚姻はありますが、2年間の別居があり、安定かつ成熟した婚姻とは評価されません。第2の5の不法在留期間の記載はなく、その長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定です。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。同じ平成18年の許可第20事例は、「興行」から不法残留となった女性が「永住者」の男性と同居して婚姻し、不法残留容疑で摘発されたにもかかわらず、同居事実と婚姻の信憑性が認められて「永住者の配偶者等(1年)」が許可された事案です。摘発という端緒よりも、共同生活が現に続いているかどうかが重かったと読めます。
弁護士のコメント
第1に、刑事処分の重みです。売春防止法違反は、全部執行猶予であっても素行面の消極要素として強く残ります。仮に不起訴処分を獲得できていれば、この重い評価そのものを生じさせずに済んだ余地がありました。事実関係に争いのある事案であれば、起訴前の段階でどこまで反論を尽くせるかが分岐点です。
第2に、別居の説明です。別居していても、就労の都合や介護など合理的な理由があり、家計や連絡の実態が示せる場合があります。本事例では合理的な理由がないとされました。説明と資料は違反審査の段階までに準備すべきものです。なお令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置です。令和6年改定では子の利益の保護の必要性も明示され、家族関係の評価の枠組み自体が動いています。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
この資料は各年20件台の抜粋にとどまります。売春防止法違反の類型で許可例が見当たらないことは、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻・認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、当局の過去の許可事例を分析して1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
当事務所は、国際的な刑事事件や裁判員裁判対象事件、広く報道された事件にも対応してきました。中国籍の方の重大事件も多数扱っています。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
婚姻の安定は、同居の記録と家計の実態で示すほかありません。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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