平成18年・家族滞在で在留中の窃盗・詐欺により不許可|執行猶予でも在留特別許可されなかった事例(不許可第8事例)
2026/08/07
事例の概要
執行猶予がついたから日本に残れる、という説明は正確ではありません。平成18年に在留特別許可をしなかった25件(法務省入国管理局が平成20年12月公表)の第8事例です。東アジア出身の22歳男性。1998年、「人文知識・国際業務」で在留する父の扶養を受けるため「家族滞在1年」で入国し、父母と同居していました。2005年に窃盗・詐欺で懲役2年執行猶予3年の判決を受けています(懲役は原典表記で、現行法では拘禁刑に相当します)。資料に記載されている事情はこれだけです。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。平成18年10月は第一次ガイドラインが策定された月で、この年から評価要素が公表されました。本事例が策定の前後どちらかは資料から判明しません。
- 消極要素・第2の6:財産犯。全部執行猶予のため入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑。全部執行猶予は除外)には当たりませんが、該当する号は条文で確認が必要です。
- 積極要素・第2の2(2)が特に考慮するのは別表第二の在留資格を持つ者との家族関係で、父の資格は別表第一であり直接当たりません。
- 第2の5の不法在留期間はありません。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定です。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。同じ平成18年の許可第19事例は、「留学」から不法残留となった男性が「定住者」の日系三世女性と同居して子が生まれ、入管法違反での逮捕は起訴猶予にとどまり、その後の婚姻の信憑性が認められて「定住者(1年)」が許可された事案です。有罪判決の有無と、別表第二の資格者との家族関係の有無が、天秤を分けたと読めます。
弁護士のコメント
第1に、執行猶予の意味です。全部執行猶予であれば入管法24条4号リには当たりませんが、それは退去強制を免れる保証ではありません。本事例は執行猶予でも許可されなかった例です。財産犯では被害弁償や示談によって不起訴処分を獲得する余地があり、仮に不起訴を得られていれば、素行面の重い消極要素を生じさせずに済んだ可能性があります。執行猶予の獲得を最終目標にしないことが要点です。
第2に、当時と現在の違いです。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で在留特別許可に申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置でした。また令和6年改定で「本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性」が積極要素として明示されており、少年期から親と暮らしてきた事情を、現在なら子の側の利益として組み立てる余地があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例は各年20件台の抜粋です。財産犯の類型に許可例が見えないことは、許可の余地がないことを示しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っています。傾向は出発点にすぎません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在などを総合的に主張し、不起訴処分を獲得しました。若い依頼者が巻き込まれる財産犯では、経緯の丁寧な説明が処分を左右します。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案でも、取調べへの対応を徹底し、全件について不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
目標は執行猶予ではなく不起訴です。この違いが在留の結果を分けます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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