平成18年・日本人女性と婚姻しても叔母と同居で不許可|留学退学後の不法残留と夫婦の実態が問われた事例(不許可第3事例)
2026/08/07
事例の概要
婚姻届があっても同居がなければどうなるのか。平成18年に在留特別許可をしなかった25件(法務省入国管理局が平成20年12月公表)の第3事例です。南アジア出身の26歳男性。2002年に「就学1年」で入国し、専門学校進学で「留学」へ変更しましたが、入学後まもなく退学して不法残留となりました。2005年に日本人女性と婚姻したものの、入管法違反で逮捕され起訴猶予となっています。婚姻後も妻と同居せず、正規在留の同国人の叔母と同居しており、別居に合理的な理由がなく夫婦の実態がないと判断されました。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。平成18年10月は第一次ガイドラインが策定された月で、この年の事例は基準が公表される前後の境目にあります。本事例がどちらの時期かは資料から特定できません。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):日本人との法律上の婚姻。もっとも同項は相当期間の共同生活と相互の扶助を求めます。その点が欠けています。
- 消極要素・第2の5:不法在留期間。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定であり、当時は積極にも消極にもなり得るとされていました。
- 消極要素・第2の6:不法残留。該当号は条文で確認が必要です。端緒は逮捕で、第2の9の出頭申告には当たりません。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討します。同じ平成18年の許可第15事例は、寄港地上陸許可後に不法残留となった女性が日本人男性と同居し、子が生まれて婚姻に至った事案で、同居事実と婚姻の信憑性が認められ「日本人の配偶者等」が許可されました。婚姻届の有無ではなく、共同生活が客観的に裏づけられるかが一線と読めます。
弁護士のコメント
第1に、刑事処分の位置づけです。本事例は起訴猶予、つまり不起訴処分であり、有罪判決という消極要素は生じていません。この点は有利に働きます。もっとも不法残留自体が退去強制事由ですから、不起訴でも手続は避けられません。そのうえで入管手続で何を立証できるかが結論を分けます。
第2に、違反審査の段階です。退去強制手続は違反調査、違反審査、口頭審理、異議申出と進み、在留特別許可は最後の段階の判断です。そこで初めて動いても遅く、同居の実態や家計の一体性を示す資料は違反審査までに整えるのが原則です。令書発付後の事情変更は原則として考慮されません(注4)。
第3に、当時との違いです。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置でした。また令和6年改定で子の利益の保護の必要性が積極要素として明示され、本事例に子の記載はありませんが、同じ骨格でも子がいれば評価は変わり得ます。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
この資料が載せるのは各年20件台にすぎません。別居が指摘された事例が不許可で並ぶことは、同じ事情なら望みがないという意味ではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が続く類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻・認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、公的書類がほとんど存在しない状況でも有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、取調べ対応を徹底し、全件について不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
婚姻の実態は、書類ではなく日々の生活の記録によって裏づけられます。早い段階からの準備が要点です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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