平成18年・第三子の難病と3度の手術で家族5人に在留特別許可|一家全員で出頭申告して定住者1年(許可第24事例)
2026/08/07
事例の概要
家族5人が一緒に出頭して、全員が許可された事例です。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料の、平成18年の許可事例第24事例で、東南アジア出身の家族5名(父43歳・母40歳・子12歳・3歳・2歳)が対象です。母は1995年に子を伴い「短期滞在90日」で入国して不法残留となり、父は寄港地上陸許可の後に不法残留となりました。同居して第二子と第三子が生まれ、一家全員で出頭申告をしています。第三子は難病で3度の手術を受け、本邦での治療の継続が必要とされました。結果は5名いずれも定住者(1年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成18年10月、第一次ガイドラインが策定されました。第3次出入国管理基本計画と規制改革・民間開放推進3か年計画(平成18年3月31日閣議決定)を受け、積極要素と消極要素が初めて外に示された年です。本事例が策定の前後どちらかは特定できません。当てはめは現行ガイドライン(令和6年3月改定)によります。
- 積極要素・第2の7(1):難病等により本邦での治療を必要とすること、及びその看護。
- 積極要素・第2の9:家族全員が自ら出頭して不法滞在を申告したこと。
- 積極要素:家族とともに生活する子の利益の保護の必要性(令和6年改定で明示)。
- 第2の2(3)に当たるかは、就学の記載がないため判断できません。
- 消極要素・第2の5:1995年からの不法在留期間。第2の6:家族全員の不法残留。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3では、積極要素が消極要素を明らかに上回ることが必要です。本事例で天秤を傾けたのは、第三子の治療の必要性と、家族全員が自ら出頭したことの組合せであったと読めます。同年の不許可第17事例は、2006年に「技能1年」で入国してコックとして稼働したものの報酬条件の相違で退職し、以後約半年間、本国の妻子への送金等のために別会社で青果物の仕分けや運搬に専従したという資格外活動の事案です。生活と家族の基盤が本邦にあるか本国にあるかという違いが、結論に表れていると考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分の記載はありません。第1に、家族全員での出頭という選択です。旧運用でも現行運用でも、出頭申告は積極要素として扱われますが、出頭は退去強制手続の開始でもあります。人道的事情の資料を先に整えてから臨むのが望ましいところです。第2に、資料です。診断書、手術と治療の経過、本国の医療事情、家族の生活実態が中心になります。当時この構図で許可されたことは、現在の結論を保証しません。令和6年改定で不法在留期間の長期化が明示的な消極要素とされ、令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)により申請手続(入管法50条1項)と考慮事情(同条5項)が法定されたためです。当時は職権発動による恩恵的措置でした。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成18年の公表は許可25件(原典は事例7を欠番とし実際の掲載は24件)と不許可25件の抜粋にとどまります。家族の人数や子の年齢の組合せは事案ごとに異なりますから、同じ形の許可例が見当たらないのは当然のことです。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
不法就労助長罪に問われた女性の事案では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得しました。退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を正面から問う訴訟を、現に係争中です。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻と認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
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結語
家族全員での出頭を選ぶ場合は、人道的事情の資料を先に揃えておくことが望まれます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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