平成18年・婚姻届の遅れに合理的な理由が認められて在留特別許可|定住者の妻と子がいる不法残留で定住者1年(許可第19事例)
2026/08/07
事例の概要
婚姻届の提出が遅れたことが、不利に評価されなかった事例です。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料の、平成18年の許可事例第19事例です。本人は東アジア出身の26歳男性。2003年に「留学1年」で入国し、その後不法残留です。2004年から日系三世の「定住者」の女性と同居し、2005年に子が生まれました。2006年に入管法違反(不法残留)で逮捕・起訴猶予となった後に婚姻が成立しました。届出の遅れは書類の不備によるものと認定され、妻の親族も婚姻を承知していたことから信憑性が認められて定住者(1年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成18年10月に第一次ガイドラインが策定され、判断の要素が初めて公表されました。第3次出入国管理基本計画と規制改革・民間開放推進3か年計画(平成18年3月31日閣議決定)に基づくものです。同年の事例は公表の前後にまたがり、本事例がどちらかは判明しません。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)による整理です。
- 積極要素・第2の2(2):別表第二の在留資格である「定住者」との家族関係。夫婦間に子があります。
- 積極要素:家族とともに生活する子の利益の保護の必要性(令和6年改定で明示)。
- 積極要素:同居の先行と、届出の遅れに合理的な理由が認められたこと。
- 消極要素・第2の5:2003年からの不法在留期間。第2の6:不法残留。
- 第2の9の出頭申告には当たりません(端緒は逮捕です)。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3に照らすと、本事例は形式の遅れが実態の否定に直結しなかった例と読めます。同年の不許可第15事例は、2000年に「就学1年」で入国して日本語学校や大学に進み、2005年に「留学」で正規在留の同国人女性と婚姻した後、不正電磁的記録カードの所持で懲役1年執行猶予3年となり、判決で反省の情が薄いと指摘されました(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。なお、この事例の配偶者の在留資格は「留学」で別表第一ですので、第2の2(2)の積極要素に直接は当たりません。
弁護士のコメント
2点を述べます。第1に、起訴猶予です。不起訴処分の一種で、有罪判決という消極要素を生じさせずに済んでいます。もっとも不法残留それ自体が退去強制事由ですから手続は避けられません。第2に、届出の遅れの説明です。必要書類の取得の経過、本国の官署とのやり取り、同居の開始時期を示す資料により、遅れが形式的な事情にとどまることを示せます。評価の枠組みは当時と現在で異なります。当時は職権発動による恩恵的措置でしたが、令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続(入管法50条1項)と考慮事情(同条5項)が定められ、令和6年改定では長期化が明示的な消極要素とされました。同じ結論になるとは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成18年の公表は許可25件(原典は事例7を欠番とし実際の掲載は24件)と不許可25件の抜粋です。届出の遅れなど個別の事情がある事案で、同じ形の許可例が公表資料に見当たらないことは結論ではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
在留資格を失った相談者について、当局から一旦不受理とされた婚姻と認知を憲法的観点からの交渉により成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析した上で、1回の申請で在留特別許可を獲得した事案があります。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下での資料収集も担いました。
特殊詐欺の受け子で複数回の再逮捕を受けた依頼者について、取調べへの徹底した対応と不当な取調べへの抗議を積み重ね、全件不起訴処分を獲得した実績があります。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
届出が遅れた事案では、遅れの理由を裏づける経過の記録が鍵になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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