平成18年・高校1年と中学1年の子の就学で家族4人に在留特別許可|入国から16年の不法残留でも定住者1年(許可第16事例)
2026/08/07
事例の概要
子の学校生活が家族全体の在留に結びついた事例です。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料の、平成18年の許可事例第16事例で、東南アジア出身の家族4名(父45歳・母40歳・子15歳・13歳)です。父母は1990年に「短期滞在90日」で入国し、その後不法残留となりました。1991年に第一子、1993年に第二子が生まれ、入国以来家族での生活が続きます。第一子は義務教育を修了して高校1年、第二子は中学1年に在学していました。結果は4名とも定住者(1年)で、刑事処分の記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成18年の事例は、判断基準が外に示されていなかった時期と示された後の境目にあります。第一次ガイドラインの策定は平成18年10月であり、第3次出入国管理基本計画と規制改革・民間開放推進3か年計画(平成18年3月31日閣議決定)を受けたものです。本事例がどちら側かは特定できません。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)による整理です。
- 積極要素・第2の2(3):本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受け地域社会に溶け込んでいる子と、その監護養育者。
- 積極要素:家族とともに生活する子の利益の保護の必要性(令和6年改定で明示)。
- 消極要素・第2の5:1990年から16年前後の不法在留期間。
- 消極要素・第2の6:家族全員の不法残留。
- 第2の9の出頭申告に当たるかは、端緒の記載がないため判断できません。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3では、積極要素が消極要素を明らかに上回ることが必要です。天秤を傾けたのは、本邦で出生した子2人の就学の継続と、入国以来16年前後の家族生活の実体であったと読めます。同年の不許可第7事例は、1996年に留学中の同国人の夫との同居で「家族滞在1年」により入国し3人で同居していましたが、本人が2004年から2005年まで個室マッサージ店を経営し、2005年に風営法違反で罰金30万円となり、指導後も収入を伴う事業の運営を続けたとされました。家族が同居していても、違反態様の性質で結論が分かれたと考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分はありません。第1に、立証の中身です。在学証明と成績、学校生活や地域との関わり、本国での就学が困難な事情が中心です。第2に、家族単位での組み立てです。子の事情が監護養育者の在留に及ぶ以上、家族全員の生活実態を一体として示すことが要点です。令書発付後の事情変更は原則として考慮されません(注4)。なお当時の在留特別許可は職権発動による恩恵的措置でした。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。長期化が明示的な消極要素とされたのも令和6年改定です。当時許可されたから今も同じ結論になる、とは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成18年の公表は許可25件(原典は事例7を欠番とし実際の掲載は24件)と不許可25件の抜粋です。就学を軸とする許可は他にも存在します。同じ構成の例が見当たらないとしても、それは結論ではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に至った女性の事案では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得し、在特の取得後もなお違反認定処分そのものの取消しを求める訴訟を係争中です。
在留資格を失った相談者について、当局から一旦不受理とされた婚姻と認知を憲法的観点からの交渉により成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析した上で、1回の申請で在留特別許可を獲得した事案があります。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下での資料収集も担いました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
子の就学を軸とする事案では、在学の記録と本国での就学の困難さを同時に示す必要があります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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