平成18年・日系三世の妻との婚姻後に逮捕され起訴猶予、在留特別許可で定住者1年(許可第11事例)
2026/08/07
事例の概要
逮捕が端緒でも、婚姻の実態が認められて許可された例です。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料の、平成18年の許可事例第11事例です。本人は中南米出身の34歳男性。2000年に「短期滞在90日」で入国し、稼働目的で不法残留となりました。日系三世として正規に在留する同国人女性と同居し、2005年に婚姻した後、入管法違反(不法残留)で逮捕され、処分は起訴猶予です。同居の事実が確認され、婚姻の信憑性が認められて定住者(1年)が許可されました。妻の在留資格の名称は資料からは特定できません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成18年10月、第一次ガイドラインが策定されました。第3次出入国管理基本計画と規制改革・民間開放推進3か年計画(平成18年3月31日閣議決定)を受け、積極要素と消極要素が初めて外に示された年です。本事例が策定の前後どちらかは特定できません。当てはめは現行ガイドライン(令和6年3月改定)によります。
- 積極要素・第2の2(2):別表第二の在留資格で在留する者との家族関係。妻が「定住者」等であれば直接当たります。
- 積極要素:婚姻に先立つ同居の事実と、婚姻の信憑性の認定。
- 消極要素・第2の5:2000年からの不法在留期間。第2の6:不法残留。
- 第2の9の出頭申告には当たりません(端緒は逮捕です)。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3の判断手法では、積極要素が消極要素を明らかに上回るかが問われます。本事例は、婚姻の時期が逮捕の直前であっても、同居が先行していたことが積極要素を支えたと読めます。同年の不許可第3事例は、2002年に「就学1年」で入国して「留学」に変更したものの入学後まもなく退学して不法残留となり、2005年に日本人女性と婚姻して入管法違反で逮捕され起訴猶予となりました。しかし婚姻後も同居せず正規在留の同国人の叔母と同居しており、別居に合理的な理由がなく夫婦の実態が認められないとされています。起訴猶予と婚姻という同じ材料でも、同居の有無で結論が分かれたと考えられます。
弁護士のコメント
起訴猶予は不起訴処分の一種で、有罪判決という消極要素を生じさせずに済んでいます。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、全部執行猶予は除かれます。号ごとに構造が異なりますから、当該事件で問題となる号を特定して考える必要があります。もっとも不法残留それ自体が退去強制事由ですので、手続は避けられません。なお当時の在留特別許可は職権発動による恩恵的措置でした。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。長期化が明示的な消極要素とされたのも令和6年改定です。当時許可されたから今も同じ結論になる、とは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成18年の公表は許可25件(原典が事例7を欠番とするため実際の掲載は24件)と不許可25件で、抜粋です。逮捕を端緒とする事案の許可例が乏しく見えても、それは許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻と認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)の事案で、証拠を徹底して分析し、被告人質問と反対尋問を積み重ねて無罪判決を獲得した実績があります。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
逮捕が端緒となった事案でも、同居の実態が積み上がっていれば道は残ります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------