平成18年・乳児院から日本人夫婦に養育され養子縁組が成立した9歳男児に在留特別許可|出頭申告で定住者1年(許可第10事例)
2026/08/07
事例の概要
生まれたときから在留資格がなく、しかも本人に何の責めもない場合があります。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料の、平成18年の許可事例第10事例です。本人は東南アジア出身の9歳男児。1996年に本邦で出生した後、在留資格取得の手続が行われず不法残留となりました。実母に養育の意思がなく乳児院に入り、1998年から日本人夫婦に養育されて出頭申告に至っています。実父母は所在不明で、養育してきた日本人夫婦との養子縁組が成立しました。結果は定住者(1年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
積極要素と消極要素が初めて例示されたのは、平成18年10月の第一次ガイドラインです。第3次出入国管理基本計画と規制改革・民間開放推進3か年計画(平成18年3月31日閣議決定)に基づきます。本事例が策定の前か後かは資料から分かりません。当てはめは現行ガイドライン(令和6年3月改定)によります。
- 積極要素・第2の2(1):日本人夫婦との養親子関係と同居監護。実子ではないため(ア)(イ)に直ちに当たるとは言えませんが、家族関係として重く評価されたと読めます。
- 積極要素:家族とともに生活する子の利益の保護の必要性(令和6年改定で明示)。
- 積極要素・第2の9:出頭申告。
- 消極要素・第2の5と第2の6:出生後の在留資格未取得による不法残留。本人に帰責性はありません。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可を検討するとします。本事例で天秤を傾けたのは、養育者が現に確保されていたことと、不法な状態が生じた経緯に本人の関与がないことであったと読めます。同年の不許可第8事例は、1998年に「人文知識・国際業務」の父の扶養で「家族滞在1年」により入国し父母と同居していましたが、2005年に窃盗と詐欺で懲役2年執行猶予3年となりました(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。幼い時期から本邦で家族と生活していても、財産犯があれば天秤は傾きにくいと考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分はありません。第1に、揃える資料です。乳児院等での保護の経過に関する記録、養子縁組の裁判資料、養育の実態を示す資料が中心になります。公的機関の記録は、本人に帰責性がないことを示す確かな材料です。第2に、提出の時期です。違反審査の段階から出しておくべきもので、令書発付後の事情変更は原則として考慮されません(注4)。当時この構図で許可されたことは、現在の結論を保証しません。令和6年改定で不法在留期間の長期化が明示的な消極要素とされ、令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)により申請手続(入管法50条1項)と考慮事情(同条5項)が法定されたためです。当時は職権発動による恩恵的措置でした。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成18年分の公表は許可25件(原典は事例7を欠番とし実際の掲載は24件)と不許可25件にとどまり、その年の許可の全体像ではありません。児童の保護が関わる事案は個別性が高く、公表事例に同じ形が見当たらないことは珍しくありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された相談者について、婚姻と認知を成立させた上で、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問と証人尋問を行い、過去の許可事例の分析を踏まえて1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議により、全件について不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
子ども自身に責めのない事案では、保護の経過を公的な記録で示すことが要点になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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