平成18年・氏名を変えて再入国した後に自ら申告して在留特別許可|上陸許可の取消しでも日本人の配偶者等1年(許可第9事例)
2026/08/07
事例の概要
一度退去強制を受けた後、氏名を変えて再入国した事案です。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料の、平成18年の許可事例第9事例です。本人は東アジア出身の29歳女性。過去に不法残留で退去強制を受けた後、本国で氏名を変更し、2005年に初回の入国と偽って「短期滞在90日」で入国しました。前回の在留中に知り合った日本人男性と婚姻し、変更申請の際に上陸拒否期間中の入国であることを自ら申告して、上陸許可が取り消されています。同居の事実が確認され、婚姻の信憑性が認められて日本人の配偶者等(1年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成18年の事例は、判断基準が外に示されていなかった時期と示された後の境目にあります。第一次ガイドラインの策定は平成18年10月であり、第3次出入国管理基本計画と規制改革・民間開放推進3か年計画(平成18年3月31日閣議決定)を受けたものです。本事例がどちら側かは特定できません。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)による整理です。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):日本人との法的な婚姻と同居の事実。信憑性が認められています。
- 積極要素:上陸拒否期間中の入国を自ら申告したこと。第2の9の出頭申告とは場面が異なりますが、自発性は評価され得ます。
- 消極要素・第2の6:上陸拒否期間中の入国と上陸許可の取消し。被退去強制歴も消極に働きます。
- 消極要素:入国時の身分事項に関する虚偽。第2の5の不法在留期間も同様です。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3に照らすと、本事例で天秤を傾けたのは、婚姻と同居の実態に加え、不利な事実を自ら明らかにしたことであったと読めます。同年の不許可第19事例は、1998年に不法残留中の婚姻で在特を得た後、離婚して再び不法残留となり退去強制され、その後は船舶で不法入国し不正に取得した日本旅券で出入国を繰り返して、2004年に懲役2年となりました(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。虚偽の入国という共通点があっても、是正を自ら申し出たかどうかで結論が分かれたと考えられます。
弁護士のコメント
第1に、刑事処分です。資料に記載はありませんが、この類型は刑事事件となり得ます。起訴前に不起訴処分を得ていれば、有罪という消極要素を生じさせずに済んだ余地があります。第2に、申告のタイミングです。本事例では変更申請の際に自ら申告しています。後から発覚する場合との差は大きく、申告の時期と内容は慎重に検討すべき事柄です。当時は職権発動による恩恵的措置で、現在は申請手続(入管法50条1項)と考慮事情(同条5項)が法定されています(令和5年改正入管法・令和6年6月10日施行)。長期化を明示的な消極要素とした令和6年改定も踏まえると、当時の結論が今も同じとは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成18年の公表は許可25件(原典は事例7を欠番とし実際の掲載は24件)と不許可25件です。掲載は抜粋で、公表されていない許可も存在します。似た許可例が見当たらないとしても、それだけで結論は決まりません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
不法就労助長罪に問われた女性の事案では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得しました。退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を正面から問う訴訟を、現に係争中です。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻と認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
入国の過程に虚偽がある事案では、いつ誰にどう申告するかが結論を大きく左右します。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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