平成18年・小中高を卒業して大学在学中に出頭申告し在留特別許可|留学1年が認められた事例(許可第6事例)
2026/08/07
事例の概要
日本で小中高を終えて大学に進んだ後、在留資格がないことに向き合った事例です。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料の、平成18年の許可事例第6事例です。本人は南米出身の男性。1992年に「留学」で在留中の父を訪問するため「短期滞在90日」で入国し、その後不法残留です。本邦で小中高を卒業し、大学に在学しています。2005年に出頭申告をし、学費と滞在費の支弁能力が認められて留学(1年)です。なお原典の年齢は41歳と読めますが就学の経過と整合しにくく、OCRによる読取りを含む資料ですので数値は参考にとどめます。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成18年10月に第一次ガイドラインが策定され、判断の要素が初めて公表されました。第3次出入国管理基本計画と規制改革・民間開放推進3か年計画(平成18年3月31日閣議決定)に基づくものです。同年の事例は公表の前後にまたがり、本事例がどちらかは判明しません。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)による整理です。
- 積極要素・第2の2(3):本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けたこと。小中高を本邦で修了しています。
- 積極要素・第2の9:出頭申告、及び別表第一の在留資格の該当性。許可が「留学」であることはこの構造と符合します。
- 消極要素・第2の5:1992年からの不法在留期間。第2の6:不法残留。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3では、積極要素が消極要素を明らかに上回るかが問われます。天秤を傾けたのは、本邦での一貫した就学歴、自ら出頭したこと、大学に在学し支弁能力もあるという将来の在留資格該当性であったと読めます。同年の不許可第2事例は、1992年に日系二世の父母と入国して日系三世として「定住者」に変更し、小学校に編入した後、14歳頃から覚せい剤取締法違反等で少年院への入退院を繰り返し、2004年に懲役1年4月となりました(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。就学歴があっても、薬物関係法令違反の常習性は覆らないと考えられます。
弁護士のコメント
第1に、薬物関係法令違反の位置づけです。入管法24条4号チは薬物関係法令違反による有罪を退去強制事由とし、執行猶予でも該当します。就学歴という積極要素でも、この消極要素は乗り越えにくいところです。第2に、出頭申告と在留資格該当性の組合せです。在学証明・成績・学費の資料を揃えて出頭したことが、結論を左右した可能性があります。なお当時の在留特別許可は職権発動による恩恵的措置でした。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法定されました(同条5項)。長期化が明示的な消極要素とされたのも令和6年改定です。当時許可されたから今も同じ結論になる、とは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成18年分の公表は許可25件(原典は事例7を欠番とし実際の掲載は24件)と不許可25件の抜粋です。就学歴を軸にした主張について似た許可例が手元の資料に見当たらないとしても、可能性の否定ではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
在留資格を失った相談者について、当局から一旦不受理とされた婚姻と認知を憲法的観点からの交渉により成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析した上で、1回の申請で在留特別許可を獲得した事案があります。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下での資料収集も担いました。
裁判員裁判の対象事件や国境を越える刑事事件、広く報道された事件を多数担当してきました。中国籍の方の重大事件の経験も積み重ねています。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
本邦での就学歴を積極要素として組み立てる場合、在学と支弁能力の裏づけを揃えることが要点です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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