平成18年・摘発の後に成立した婚姻でも定住者の夫との同居の事実で在留特別許可|不法残留11年で定住者1年(許可第4事例)
2026/08/07
事例の概要
摘発の後に婚姻が成立した場合、その婚姻はどう評価されるのか。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料の、平成18年の許可事例第4事例が参考になります。本人は中南米出身の29歳女性。1995年に親族訪問のため「短期滞在90日」で入国し、その後不法残留となりました。「定住者」で正規に在留する同国人男性と交際して同居し、2006年に不法残留で摘発された後に婚姻が成立しています。同居の事実が確認され、婚姻の信憑性が認められて定住者(1年)が許可されました。婚姻期間そのものは短く、それに先立つ交際と同居の積み重ねが効いた事案と読めます。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
積極要素と消極要素が初めて例示されたのは、平成18年10月の第一次ガイドラインです。第3次出入国管理基本計画と規制改革・民間開放推進3か年計画(平成18年3月31日閣議決定)に基づきます。本事例が策定の前か後かは資料から分かりません。当てはめは現行ガイドライン(令和6年3月改定)によります。
- 積極要素・第2の2(2):別表第二の在留資格(永住者・定住者等)で在留する者との家族関係。夫は「定住者」ですので直接当たります。
- 積極要素:同居の事実の確認と、婚姻の信憑性の認定。
- 消極要素・第2の5:1995年から11年に及ぶ不法在留期間。
- 消極要素・第2の6:不法残留。端緒は摘発ですので第2の9には当たりません。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3に照らすと、本事例では婚姻の成立が摘発後であっても、先行する同居の実態が積極要素の側を支えたと読めます。同年の不許可第24事例は、2001年に日系人と偽って不法入国し、更新申請の不許可後に所在不明となり、2006年に入管法違反で逮捕・起訴猶予となった後に同国人の永住者と婚姻が成立しました。しかし夫婦間の申立てに著しい齟齬があり、相互の協力扶助も認められないとされ不許可でした。分かれ目は、同居の事実と申立ての一致があるかどうかであったと考えられます。
弁護士のコメント
2点を挙げます。第1に、配偶者の在留資格の種類です。第2の2(2)が特に考慮するのは別表第二の在留資格者との家族関係で、配偶者が別表第一(留学、家族滞在等)ならこの積極要素に直接当たりません。夫が「定住者」であった本事例は、主張の土台が明確でした。第2に、摘発を端緒とする事案の初動です。届出の事実だけでなく、それ以前の同居と生計の一体性を示す資料を違反審査の段階から出しておくことが要点です。評価の枠組みは当時と現在で異なります。当時は職権発動による恩恵的措置でしたが、令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続(入管法50条1項)と考慮事情(同条5項)が定められ、令和6年改定では長期化が明示的な消極要素とされました。同じ結論になるとは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
この年は許可と不許可がともに公表されましたが、いずれも25件(許可は原典が事例7を欠番とし実際の掲載は24件)の抜粋です。自分の事情に近い許可例が見当たらないことは、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻と認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議により、全件について不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
配偶者の在留資格が別表第二に属するかどうかは、主張の組み立てを左右します。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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