平成19年・永住者との婚姻を申し立てても同居の事実がなく不許可|起訴猶予を得ていても許可されなかった事例(不許可第8事例)
2026/08/07
事例の概要
起訴猶予となっても許可されなかった例です。平成19年に在留特別許可をしなかった10件のうちの第8事例で、東アジア出身の23歳女性です。2003年に「就学1年」で入国し、2005年に日本人男性と婚姻して在留資格の変更を申請しましたが不許可となり、離婚して不法残留となりました。2007年に在留資格「永住者」を有する同国人男性と婚姻した後、入管法違反で逮捕され、起訴猶予となっています。もっとも、同居していると申し立てられた当該男性との同居の事実はなく、当該男性が述べた勤務先も1年以上前に解雇済みであったことが判明しました。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成19年は第一次ガイドライン(平成18年10月策定)の下での運用です。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)による整理です。
- 積極要素・第2の2(2)には当たりません。「永住者」との婚姻ではあるものの、同居の事実がありません。
- 消極要素・第2の5:2年前後の不法在留期間。長期化が消極要素と明示されたのは令和6年改定です。
- 消極要素・第2の6:不法残留。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。
- 消極要素・その他:手続における申立ての内容が事実と異なっていた点も評価されます。
- 出頭申告(第2の9)には当たりません。子の記載はなく、子がいる事案であれば令和6年改定で明示された子の利益の要素が別途働く余地があります。
結論を分けた一線はどこか
第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。同じ平成19年の許可第2事例は、就学で入国した後に不法残留となり、逮捕の直後に「定住者」の男性と婚姻した事案ですが、2006年からの同居が先行しており、同居の事実と婚姻の信憑性が認められて許可されました。本事例は、起訴猶予という有利な処分を得ていながら、申立てが事実と異なることが判明しています。刑事処分の軽さでは、申立ての破綻を補えないと読めます。
弁護士のコメント
第1に、起訴猶予の位置づけです。有罪判決が残らないことは有利な事情ですが、それだけで許可に至るものではありません。本事例では積極要素として主張された婚姻の内実が失われ、天秤に乗せるものがなくなりました。不起訴の獲得は、必要ではあっても十分な条件ではありません。
第2に、申立ての正確さです。入管の調査は、住居や勤務先、生活の実際にまで及びます。事実と異なる申立ては、それ自体が消極要素となるだけでなく、他の主張の信用まで損ないます。違反審査の段階から、裏づけのある事実だけを積み上げる必要があります。当時は職権発動による恩恵的措置であり、申請手続と考慮事情が法定された現在(令和5年改正入管法・入管法50条1項・5項)とは前提が異なります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表されているのは平成19年分までで、その年は許可10件と不許可10件です。平成20年から平成25年までの6年分は本体が確認できません。同じ「永住者との婚姻」でも実態の有無で結論は正反対になりますし、6年分が欠けた資料から読める傾向は限られます。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、当局から一旦不受理とされた婚姻・認知を憲法的観点からの交渉によって成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析することで1回の申請で在留特別許可を獲得しました。裏づけのある事実を積み上げる作業が中心です。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
主張は、調査に耐える事実の上にだけ組み立てる必要があります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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