平成19年・日本人の配偶者等で入国した後に離婚と再婚、売春防止法違反で不許可|婚姻が安定かつ成熟と認められなかった事例(不許可第7事例)
2026/08/07
事例の概要
正規の在留資格で来日した後の経緯が問われた事例です。平成19年に在留特別許可をしなかった10件のうちの第7事例で、東アジア出身の31歳女性です。2005年に本国で日本人男性と婚姻し、2006年に「日本人の配偶者等1年」で入国しましたが、その後離婚しました。別の日本人男性と婚姻して風俗店を経営し、2007年に売春防止法違反で懲役1年6月、執行猶予3年の判決を受けています(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。日本人夫との婚姻が安定かつ成熟しているとは認められませんでした。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成19年は第一次ガイドライン(平成18年10月策定)の下での運用で、基準が公表された後の年です。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)による整理です。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ)には当たりません。婚姻はありますが、安定かつ成熟しているとは認められていません。
- 消極要素・第2の3(エ):売春関係の事情。社会秩序を著しく乱す行為として重い消極要素とされます。
- 消極要素・第2の6:全部執行猶予のため入管法24条4号リには当たらないと読めますが、事実の反社会性が評価されます。
- 不法在留期間についての記載はありません。長期化が消極要素と明示されたのは令和6年改定です。
- 子の記載はなく、子がいる事案であれば令和6年改定で明示された子の利益の要素が別途働く余地があります。
結論を分けた一線はどこか
第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。同じ平成19年の許可第9事例は、婚姻も認知もない母子の事案で、端緒も摘発でしたが、子の先天性の難病と本国での治療の困難という人道的事情によって許可されています。本事例は、日本人配偶者という形式がありながら婚姻の成熟性が認められず、素行に関わる重い事情が加わりました。形式より実質が見られていると読めます。
弁護士のコメント
第1に、刑事処分の分岐です。売春防止法違反について起訴前の段階で不起訴処分を得られていれば、素行に関わる消極要素の重さは変わり得ました。断定はできませんが、有罪判決が残るかどうかは、この類型の評価に直接影響します。執行猶予ではなく不起訴を目標に置く必要があります。
第2に、婚姻の安定性と成熟性の立証です。同居の期間と実際、生計の一体性、親族や周囲との交流といった具体的な事実の積み重ねが求められます。婚姻の回数それ自体が結論を決めるわけではありませんが、経緯の説明は避けられません。当時は職権発動による恩恵的措置であり、申請手続と考慮事情が法定された現在(令和5年改正入管法・入管法50条1項・5項)とは前提が異なります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集が公表されたのは平成19年分までで、その年は許可10件と不許可10件です。平成20年から平成25年までの6年分は本体を確認できず、当時の運用の全体像は分かりません。20件の抜粋と6年の空白しか手元にない資料から、可能性の有無を決めることはできません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の徹底した分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。裁判員裁判の対象事件や広く報道された重大事件にも多数対応しています。公判に至った事案でも、争い方によって結論は動きます。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
婚姻の実質を示す資料と、刑事処分をどこで止めるかの二つが要点になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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