平成19年・窃盗で1年2月の実刑と2回目の退去強制手続で不許可|定住者として入国していた日系3世の事例(不許可第3事例)
2026/08/07
事例の概要
実刑判決を受けた後の在留を考える事例です。平成19年に在留特別許可をしなかった10件のうちの第3事例で、南米出身の38歳男性です。2002年に日系3世として「定住者3年」で入国し、2005年に窃盗で懲役1年2月の実刑判決を受けて服役し(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)、仮釈放の後に同国人の恋人との婚姻を希望していました。もっとも、これまでに窃盗で2回の執行猶予判決を受け、退去強制手続も2回目でした。加えて、当該恋人に婚姻の意思がないことも判明しています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成19年は第一次ガイドライン(平成18年10月策定)の下での運用です。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)による整理です。
- 消極要素・第2の6:1年を超える拘禁刑の実刑ですから入管法24条4号リに当たります。窃盗の繰り返しも反社会性の評価に関わります。
- 消極要素:退去強制手続が2回目であること。被退去強制歴は重い消極要素とされています。
- 積極要素・第2の2(2)には当たりません。婚姻は成立しておらず、相手方に婚姻の意思がありません。
- 不法在留期間の記載はありません。長期化が消極要素と明示されたのは令和6年改定です。
- 子の記載はなく、子がいる事案であれば令和6年改定で明示された子の利益の要素が別途働く余地があります。
結論を分けた一線はどこか
第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。同じ平成19年の許可第7事例は、入管法違反で2年6月・執行猶予3年の判決を受けながら許可されています。違いは、刑が全部執行猶予であったことと、「永住者」の女性との7年に及ぶ同居があったことです。本事例は実刑と2回目の手続に加え、家族関係の実質がありませんでした。刑の性質と家族関係の有無が重なって結論を分けたと考えられます。
弁護士のコメント
第1に、量刑の意味です。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、全部執行猶予の場合は除かれます。本事例の刑は1年2月の実刑ですから、この号に当たります。不起訴処分を得るか、量刑が1年以下にとどまるか、全部執行猶予となっていれば、同号による退去強制事由は生じなかった可能性があります。この境目を見据えた方針が必要です。
第2に、繰り返しの評価です。2回の執行猶予判決という経過は、次の事件で不起訴や執行猶予を得ることを難しくします。最初の事件の段階から不起訴を目標に置いておくべきだったと考えられます。当時は職権発動による恩恵的措置であり、申請手続と考慮事情が法定された現在(令和5年改正入管法・入管法50条1項・5項)とは前提が異なります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例は各年20件前後にとどまり、平成19年分でその公表も終わっています。平成20年から平成25年までの6年分は本体が確認できず、その間の運用は前後の年から推し量るしかありません。抜粋と空白からなる資料に自分と同じ事情の許可例がないことは、可能性がないことの証明にはなりません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案では、取調べへの対応を徹底し、不当な取調べには抗議を重ねることで、全件について不起訴処分を獲得しました。件数が重なる事案でこそ、処分の積み上がりを止める必要があります。
国際的な刑事事件、裁判員裁判の対象事件、世界的に報道された事件への対応実績もあります。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
財産犯では、最初の1件をどう終わらせるかが在留の可否を左右します。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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