平成19年・逮捕後に永住者の同国人女性と婚姻して在留特別許可|起訴猶予と2年間の同居実態が評価された事例(許可第1事例)
2026/08/07
事例の概要
逮捕された後に婚姻が成立した場合でも許可された例があります。平成19年に在留特別許可をした10件のうちの第1事例で、東南アジア出身の32歳男性です。2003年に「短期滞在90日」で入国し、期限を過ぎて不法残留となりました。2005年からは在留資格「永住者」を有する同国人女性と同居し、2007年に入管法違反で逮捕されたものの、起訴猶予(不起訴処分の一つ)となり、その後に婚姻が成立しています。事例集は、同居の事実と婚姻の信憑性が認められたと記しています。結果は「永住者の配偶者(1年)」です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成19年は第一次ガイドライン(平成18年10月策定)の下での運用で、基準が公表された後の年です。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)による整理です。
- 積極要素・第2の2(2):別表第二の在留資格「永住者」との婚姻関係。同居の事実と婚姻の信憑性が認められた点が中心です。
- 消極要素・第2の5:4年前後の不法在留期間。長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定で、当時の扱いは異なりました。
- 消極要素・第2の6:不法残留。どの号に当たるかは事案ごとに条文に当たって確認する必要があります。
- 出頭申告(第2の9)には当たりません。子の記載はなく、子の利益の保護の必要性が明示されたのも令和6年改定です。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。本事例で天秤を傾けたのは、婚姻が逮捕の後であっても、2005年から続く同居の事実が婚姻の信憑性を裏づけた点だと読めます。同じ平成19年の不許可第2事例は、退去強制手続の途中で「永住者」の女性と婚姻が成立した事案ですが、当該女性が別の女性らと同居していたことなどから婚姻の信憑性が認められず、不許可でした。婚姻の成立時期ではなく、それを支える生活の実態があるかどうかが分かれ目と考えられます。
弁護士のコメント
第1に、起訴猶予を得ていることの意味です。不法残留それ自体は刑事処分の有無と関わりなく退去強制事由となるため手続は避けられませんが、有罪判決が残らなければ素行面の消極要素は軽くなり得ます。起訴前の段階から不起訴処分を目標に据える意味は、この類型でも失われません。
第2に、立証の時期です。同居の実態は、住居や家計に関する資料と第三者の陳述を積み重ねて示すほかありません。注4により令書発付後の事情変更は原則として考慮されません。当時は職権発動による恩恵的措置でしたが、令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も明示されました(同条5項)。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成19年に公表されたのは許可10件と不許可10件にすぎません。しかも、この一連の公表事例は平成19年分が最後で、平成20年から平成25年までの6年分は、入管庁のウェブサイトにも当事務所の入手資料にも本体が見当たりません。公表事例が網羅的でないことは、この6年の空白そのものが示しています。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻・認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
婚姻の時期が遅れた事案では、それ以前の生活の積み重ねを資料で示せるかが要点になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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