平成26年・占領下の沖縄で日本人の子として出生した方に定住者(1年)|在日約44年10月で在留特別許可が認められた事例(D類型許可第6事例)
2026/08/07
事例の概要
出生の経緯そのものが評価された例です。平成26年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)許可第6事例で、結論は許可です。違反態様は不法残留、端緒は警察による逮捕、在日約44年10月・違反約17年4月です。在留を希望する理由は本邦に生活基盤があることで、特記事項には日本人の子として占領下の沖縄で出生したものと記されています。刑事処分はなく、被退去強制歴の記載もありません。許可内容は定住者(1年)です。婚姻関係や子については、原典の表に欄がなく判明しません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は改正入管法施行(令和6年6月10日)前、改定前ガイドラインの下での判断です。
- 積極要素・第2の2(1):日本人の実子であることは特に考慮する積極要素です。本事例は日本人の子として出生したと記されており、この要素に当たり得ます。
- 積極要素・その他:在日約44年10月という生活の長さと地域社会との関係。日本国籍を取得していない経緯に本人の帰責性を見出しにくいことも実質的に働いたと読めます。
- 消極要素・第2の5:約17年4月の不法在留。
- 消極要素・第2の6:不法残留という退去強制事由。どの号に当たるかは事案ごとに条文に当たって確認する必要があります。第2の9の出頭申告にも当たりません。
結論を分けた一線はどこか
第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。本事例は警察による逮捕を端緒とし出頭申告の積極要素を欠きますが、刑事処分はなく、消極要素は不法残留と期間の長さにとどまりました。他方、日本人の子としての出生と半世紀近い生活という積極要素は重いものです。同じ平成26年D類型の不許可第7事例も日系二世として本邦の生活基盤を主張しましたが、薬物事犯で実刑判決を受け不許可でした。血縁や生活の長さだけでなく、刑事処分の有無が結論を左右したと読めます。
弁護士のコメント
2点を挙げます。
第1に、端緒が警察による逮捕であっても、刑事処分に至らなければ消極要素は退去強制事由と不法在留期間に絞られます。ここが分岐点です。逮捕直後の72時間は勾留の当否が決まる時間であり、この段階での弁護活動が、後の入管手続で背負う消極要素の重さを左右します。
第2に、身分関係の立証です。出生の経緯や親の国籍に関する資料は、時間の経過とともに集めにくくなります。戸籍や住民票の記載、出生の状況を知る関係者の陳述、本邦での居住歴を示す資料を積み上げる必要があります。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しませんので、収集は早く始めるべきものです。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集が載せるのは各年20件前後で、公表されない許可事案も多数あります。同種の許可例が見当たらないことから許可の可能性がないと判断する必要はございません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、なお違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議により、全件について不起訴処分を獲得しております。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的な観点から交渉して婚姻と認知を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
出生や身分関係に特別な経緯がある場合、その経緯を資料で具体的に示せるかが要点になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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