平成26年・約22年の不法残留でも母子に定住者(1年)|本邦で出生した10歳の子と出頭申告した事例(C類型許可第2事例)
2026/08/07
事例の概要
不法残留の期間が20年を超えていても許可された例です。平成26年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のC類型(外国人家族の場合)許可第2事例で、結論は許可です。母子ともに定住者(1年)が認められました。違反態様は不法残留、端緒は母子での出頭申告で、本人は在日約22年3月・違反約22年です。子は10歳で、本邦で出生した後に在留資格を取得していない状態でした。子の父親は出国済みです。刑事処分はなく、被退去強制歴の記載もありません。子の就学状況は判明しません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は改正入管法施行(令和6年6月10日)前、改定前ガイドラインの下での判断です。
- 積極要素・第2の2(3):子は本邦で出生し、10年の生活の全部が本邦にあります。監護養育者である母も同項の対象になり得ますが、就学の記載がないため相当期間の教育を受けたと断定はできません。
- 積極要素:家族とともに本邦で生活する子の利益の保護の必要性。明示は令和6年3月改定(参議院附帯決議14項)です。
- 積極要素・第2の9:母子での出頭申告。
- 消極要素・第2の5:約22年という長期の不法在留。令和6年改定で明示的な消極要素とされました。
- 消極要素・第2の6:不法残留という退去強制事由。どの号に当たるかは事案ごとに条文に当たって確認する必要があります。
結論を分けた一線はどこか
積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討する(第3)という枠組みの下、約22年の不法在留という重い消極要素があっても許可されています。天秤を傾けたのは、本邦で出生した子が生活の全部を本邦で送り、父親が出国済みで本国側に養育の受け皿が見えないことであると読めます。同じ平成26年C類型の不許可第2事例は、母子での出頭申告は共通ですが、子は6歳、在日約6年11月でした。子が本邦で過ごした年数の厚みが結論を分けたと考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分がない事例ですので、2点に絞ります。
第1に、不法在留期間の長さは令和6年改定で明示的な消極要素とされた一方、その間に築いた地域社会との関係は別途積極要素として考慮される留保があります。長い期間を放置せず、居住・就労・納税・地域活動の記録で関係の内容を示す発想が要点です。
第2に、子について何を示すかです。本邦で出生し在留資格を取得していない子の場合、出生の届出、就学の状況、本国に養育者がいるかどうかが中心です。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しませんので、違反審査の段階までに提出するのが安全です。必要な資料は事案によります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋にとどまり、その年の許可の全部ではありません。同じ事情の許可例が見当たらないことは、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的な観点から交渉して婚姻と認知を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
特殊詐欺の出し子とされた20代の女性について、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
長期の不法在留であっても、子の生活の実体を示すことができれば結論が変わり得るのが、この類型の特徴でございます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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