平成26年・家族3人で出頭申告して全員に定住者(1年)|母に被退去強制歴があっても許可された事例(C類型許可第1事例)
2026/08/07
事例の概要
子と一緒に不法滞在の状態にあるご家族が、そろって出頭した場合の例です。平成26年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のC類型(外国人家族の場合)許可第1事例で、結論は許可です。家族3人がいずれも定住者(1年)を認められました。違反態様は不法残留、端緒は家族全員での出頭申告です。本人は在日約21年2月・違反約8月、配偶者は在日約14年・違反約8月、子は12歳で在日約12年11月・違反約8月です。刑事処分はなく、母に被退去強制歴が1回あります。子の就学状況は事例集の記載からは判明しません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は改正入管法施行(令和6年6月10日)前、改定前ガイドラインの下での判断です。
- 積極要素・第2の2(3):本邦で相当期間の教育を受け、本国での就学が困難で地域社会に溶け込んでいる子とその監護養育者が対象です。子は12歳で在日期間が年齢とほぼ重なりますが、就学の記載がなく、同項に当たると断定はできません。
- 積極要素:家族とともに本邦で生活する子の利益の保護の必要性。明示は令和6年3月改定(参議院附帯決議14項)です。
- 積極要素・第2の9:家族全員の出頭申告。
- 消極要素・第2の5:不法在留期間。令和6年改定で明示的な消極要素とされました。
- 消極要素・第2の6:不法残留という退去強制事由。どの号に当たるかは事案ごとに条文に当たって確認する必要があります。母の被退去強制歴も不利に働き得ます。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。本事例で天秤を傾けたのは、子が生活のほぼ全部を本邦で送ってきたことと、家族全員が自ら出頭したことであると読めます。同じ平成26年C類型の不許可第1事例も家族全員での出頭申告ですが、父母ともに被退去強制歴が1回あり、子は1歳でした。子が本邦で積み上げた生活の厚みが、退去強制歴という不利な事情を上回るかが分かれ目であったと考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分のない事例ですので、2点を挙げます。
第1に、出頭申告は第2の9の積極要素である一方、同時に退去強制手続の開始でもあります。家族の誰について何を求めるのかを整理し、資料をそろえて臨むのが望ましいところです。
第2に、立証に着手する段階です。手続は違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)、異議申出と進み、注4は退去強制令書の発付後の事情変更を原則として考慮しません。子の在学を示す書類や家計の一体性を示す資料は、違反審査までに整えるのが安全です。必要な資料は事案によります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋にとどまり、その年の許可の全部ではありません。同じ事情の許可例が見当たらないことは、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的な観点から交渉して婚姻と認知を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
子と共に不法滞在の状態にあるご家族の場合、家族の生活の実体をどの段階でどのように示すかが結論を左右いたします。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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