平成26年・船舶による密航で不法入国、勾留中に婚姻して不許可|執行猶予付きの判決でも許可されなかった事例(A類型不許可第3事例)
2026/08/07
事例の概要
問われたのは婚姻の成立時期です。平成26年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のA類型(配偶者が日本人の場合)不許可第3事例です。違反態様は不法入国、端緒は警察による逮捕で、在日約7年11月の全部が違反期間です。日本人配偶者との婚姻は約2月で、夫婦間の子はありません。刑事処分は入管法違反(不法入国)により懲役2年、執行猶予4年の判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。特記事項には、出国命令歴、今次の入国が船舶による密航であること、身柄拘束中の婚姻成立の記載があります。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は改正入管法施行(令和6年6月10日)前、改定前ガイドラインの下での判断です。
- 第2の2(1)(ウ):婚姻期間は約2月で、身柄拘束中の成立です。相当期間の共同生活という要素を満たしません。
- 第2の9:端緒は警察による逮捕で、自ら出頭したことには当たりません。
- 消極要素・第2の5:約7年11月の不法在留。
- 消極要素・第2の6:不法入国という退去強制事由と有罪判決。出国命令の後の再入国も重く働きます。
- 入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑を退去強制事由としますが全部執行猶予は除かれ、執行猶予付きの本事例はこの号に当たりません。
結論を分けた一線はどこか
同じ平成26年A類型の許可第4事例と比べます。そちらも不法入国ですが、端緒は出頭申告で、婚姻は約1年3月、夫婦間に未成年の子が1人ありました。
一線は2つと読めます。婚姻が身柄拘束より前から続いていたか、家族生活の実体が示されていたかです。本事例の婚姻は勾留中に成立しており、手続への対応として整えられたと見られやすい構図でした。加えて出国命令歴があり、過去に一度は自ら出国する機会があった事案です。
弁護士のコメント
第1に、刑事段階の意味です。入管法違反(不法入国)で不起訴処分を獲得できていれば、有罪判決という消極要素は生じずに済んだ余地があります。もっとも退去強制事由は判決と別に存在しますので、不起訴だけで退去強制を避けられたとは言えません。
第2に、執行猶予を最終目標にしないことです。本事例の刑は執行猶予付きで24条4号リには当たりませんが、退去強制は避けられていません。号ごとに構造が異なりますので、問題となる号を特定して弁護方針を立てる必要があります。
第3に、婚姻の時期です。身柄拘束後の婚姻は、実体の裏付けが乏しいと評価されやすいです。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しませんので、認定と判定のそれぞれに不服を留保しておく必要があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集に載るのは各年20件前後で、そこに現れる傾向は出発点にすぎません。似た事情の許可例が見当たらないことを可能性の否定と読む必要はありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しております。裁判員裁判の対象事件や報道された重大事件にも多数対応してまいりました。
在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された相談者の事案では、当局との交渉により婚姻と認知を成立させ、過去の許可事例を分析して1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
執行猶予の獲得は、在留の維持を意味するものではございません。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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