平成26年・出頭申告でも被退去強制歴3回で不許可|日本人配偶者・婚姻約11月・不法入国から約10年5月の事例(A類型不許可第1事例)
2026/08/07
事例の概要
自ら出頭しても許可に至らなかった事例です。平成26年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のA類型(配偶者が日本人の場合)不許可第1事例です。違反態様は不法入国、端緒は出頭申告で、在日約10年5月の全部が違反期間です。日本人配偶者との婚姻期間は約11月で、夫婦間の子はありません。刑事処分はなく、事例集が挙げているのは被退去強制歴が3回あるという点です。在留を希望する理由は原典の表に記載がなく判明しません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は改正入管法施行(令和6年6月10日)前、改定前ガイドラインの下での判断です。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):日本人との法的な婚姻。もっとも約11月で夫婦間の子もなく、相当期間の共同生活という要素は満たしにくい状況です。
- 積極要素・第2の9:出頭申告。
- 消極要素・第2の5:約10年5月の不法在留。在日期間の全部に及びます。
- 消極要素・第2の6:不法入国という退去強制事由。どの号かは条文で確認が必要です。加えて被退去強制歴が3回あり、手続が繰り返された事実として重く働きます。
素行不良(第2の3)を基礎づける記載はなく、刑事処分もありません。
結論を分けた一線はどこか
比べたいのは同じ平成26年A類型の許可第3事例です。そちらも不法入国で出頭申告、在日約18年の全部が違反期間で、違反期間は本事例より長いのに許可されています。婚姻期間も約1年11月にとどまります。
異なるのは2点です。許可事例では前夫との間の日本国籍を有する実子を養育しており、被退去強制歴の記載もありません。ガイドライン第3は積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとしていますので、本事例では被退去強制歴3回という消極要素を上回る積極要素がなかったと読めます。
弁護士のコメント
第1に、刑事処分がなくても不許可はあり得ます。ここで決定的だったのは被退去強制歴の反復です。過去の退去強制歴は消せない事実ですので、それを前提に積極要素をどこまで積み上げられるかという設計になります。
第2に、争う段階です。婚姻約11月で子がないという構成では、婚姻の実体を示す資料が薄くなりがちです。手続は違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)、法務大臣への異議申出と進み、注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しません。同居と家計の一体性を示す資料は違反審査の段階で出しておくべきものです。
第3に、出頭申告は積極要素ですが、それ単独で結論を決めるものではありません。注4は、特に考慮する積極要素があれば必ず許可されるわけではないと明示しています。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
不許可事例が並ぶ類型に自分が当てはまると感じても、それが結論ではありません。事例集は各年20件前後の抜粋にすぎず、行政が示した傾向の一断面です。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。
観光目的で来日した相談者が在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、当局から一旦不受理とされた婚姻と認知を憲法的な観点からの交渉によって成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
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多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。刑事手続後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
過去の履歴が重い事案では、積極要素をどこまで積めるかが勝負になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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