平成27年・自ら経営する飲食店で外国人を不法就労させて不許可|日本人の配偶者等で在留中に離婚していた事例(D類型不許可第3事例)
2026/08/07
事例の概要
正規の在留資格を持つ方が素行の評価により退去強制手続に至った例です。平成27年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)不許可第3事例です。違反態様は不法就労助長、端緒は当局の摘発、在日約5年です。違反期間の欄は原典で斜線であり該当なしの趣旨です。在留希望の理由は、本邦に生活基盤があることでした。刑事処分等の欄は無です。特記事項には、自己が経営する飲食店において外国人に不法就労させたこと、在留資格「日本人の配偶者等」で在留中であったが離婚していたことが記されています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は改正入管法施行(令和6年6月10日)前、改定前ガイドラインの下での判断です。
- 消極要素・第2の3(イ):他の外国人の不法就労や在留資格の偽装に関わる行為は、特に考慮する消極要素です。自ら経営する店舗での不法就労は正面から当たります。
- 消極要素・第2の6:不法就労助長行為は入管法24条3号の4に対応する退去強制事由です。
- 積極要素・第2の2(1):日本人との婚姻は積極要素ですが、本事例では離婚しています。
- 第2の9:端緒は当局の摘発ですので、自ら出頭したことに当たりません。
- 第2の5:在留資格を有していたため不法在留期間はなく、この点は消極要素になっていません。
結論を分けた一線はどこか
在留資格を持ち不法在留期間もない一方で、素行に関する特に考慮する消極要素が正面から認定されています。同じ平成27年D類型の許可第7事例は、被退去強制歴があり逮捕を端緒としながら、本邦での就学と就労を土台に定住者(1年)が認められました。第3の判断手法に照らせば、在留の外形が整っているかではなく、第2の3の消極要素が現れているかが天秤を決めていると読めます。
弁護士のコメント
2点を挙げます。
第1に、故意・過失の問題です。不法就労助長では、雇い入れた相手の在留資格や就労可否をどこまで確認していたかが問われます。刑事事件であれば故意の検討が当然の出発点ですが、入管実務では退去強制事由の判断に故意や過失を要しないとする運用が長年踏襲されています。松村大介弁護士は、この運用の当否を正面から問う訴訟を現に係争中です。断定的な結論を示せる段階ではありませんが、確認の体制や記録の有無は主張の骨格になります。
第2に、争う段階です。本事例は刑事処分等の欄が無ですので、判断は入管手続の中で完結しています。だからこそ違反審査の段階から退去強制事由該当性そのものを争い、在留資格の確認について何をしていたかを記録で示す必要があります。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
不法就労助長は、公表事例では不許可が並ぶ類型です。もっとも事例集は各年20件前後の抜粋にとどまり、この類型で許可された事案が存在しないことを示すものではありません。現に当事務所は、不法就労助長に問われて退去強制の危機にあった事案で在留特別許可を獲得しており、許可を得た後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。傾向は出発点であって結論ではなく、理論構成と立証の工夫によって超えられる場合があります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性を救済する裁判では、退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務を覆すべく、責任主義と過失責任主義の射程を問う訴訟を続けております。この事件では在留特別許可を獲得したうえで、なお違反認定処分の取消しを争っております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
雇用の場面では、在留資格の確認をどう記録に残すかが後の手続を大きく左右いたします。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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