平成27年・本邦出生で小中高の教育を受け就労、被退去強制歴1回でも定住者(1年)|警察に逮捕されて発覚した事例(D類型許可第7事例)
2026/08/07
事例の概要
日本で生まれ、日本の学校を出て働いていた方の例です。平成27年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)許可第7事例で、結論は許可です。違反態様は不法残留、端緒は警察による逮捕で、在日約21年4月・違反約2月です。在留希望の理由は、本邦に生活基盤があることです。特記事項には、被退去強制歴が1回あること、本邦で出生した後に本邦の小学校・中学校・高校で教育を受け、就労していたことが記されています。刑事処分等の欄は無とされています。許可内容は定住者(1年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は改正入管法施行(令和6年6月10日)前、改定前ガイドラインの下での判断です。
- 積極要素・第2の2(3):本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受け、本国で初等中等教育を受けることが困難な事情があり、地域社会に溶け込んでいる者が対象です。本事例は小学校から高校までの課程を本邦で受けた旨が明記されており、この要素に正面から当たると読めます。
- 積極要素・その他:本邦で出生し、就労して生活の基盤を築いていたこと。地域社会との関係も考慮の対象です。
- 第2の9:端緒は警察による逮捕ですので、自ら出頭したことには当たりません。
- 消極要素・第2の5:不法在留は約2月と短期です。
- 消極要素・第2の6:不法残留という退去強制事由と、被退去強制歴1回。
結論を分けた一線はどこか
被退去強制歴があり、しかも発覚の端緒が逮捕でありながら許可されています。天秤を傾けたのは、第2の2(3)に正面から当たる本邦での就学歴と、それを土台とする就労の実績であると読めます。同じ平成27年のC類型不許可第1事例は、子が2歳で本邦の教育機関での就学がまだない段階でした。同じ本邦出生という事実でも、教育と就労がどこまで積み上がっているかで評価の重みが大きく違うと考えられます。
弁護士のコメント
2点を挙げます。
第1に、刑事処分の有無が入管の判断に及ぼす影響です。本事例は逮捕を端緒としながら、刑事処分等の欄は無とされています。仮に有罪判決を受けていれば、第2の6の反社会性の評価に消極要素が加わり、結論は変わり得たところです。逆に言えば、逮捕された段階で不起訴処分を獲得しておくことは、その後の在留特別許可の判断にとっても意味を持ちます。当事務所が起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標とするのは、この構造があるためです。
第2に、就学歴の立証です。在学証明、卒業証明、成績や部活動の記録、教員や地域の支援者の陳述など、本邦で受けた教育の中身を具体的に示す資料が中心になります。手続は違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)、異議申出と進み、注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集に載るのは各年20件前後で、その年の許可の全体像ではありません。被退去強制歴があり逮捕で発覚したという条件が並んでいても、本事例のように許可されることがあります。当事務所が担当した不法就労助長の事案も、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
不法就労助長に問われて退去強制の危機にあった女性の事案では、在留特別許可を獲得したうえで、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を問う訴訟を続けております。
観光目的で来日した相談者が在留資格を失った事案では、婚姻と認知が未了で一旦不受理とされたところ、交渉して手続を成立させ、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
日本で育った方の事案では、教育と就労の履歴を具体的に示すことが結論を左右いたします。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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