平成27年・母の連れ子として来日後に不法残留、くも膜下出血の後遺症による障害で定住者(1年)|緊急入院で所在が判明した事例(D類型許可第6事例)
2026/08/07
事例の概要
摘発で発覚した事案でも、健康上の事情が評価された例です。平成27年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)許可第6事例で、結論は許可です。違反態様は不法残留、端緒は当局の摘発で、在日約25年8月・違反約11年6月です。在留希望の理由は、本邦に生活基盤があること、及びくも膜下出血の後遺症による障害があることです。特記事項には、母の連れ子として来日した後に不法残留となっていたこと、緊急入院で所在が判明したことが記されています。刑事処分はなく、許可内容は定住者(1年)です。症状の詳細には立ち入りません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は改正入管法施行(令和6年6月10日)前、改定前ガイドラインの下での判断です。
- 積極要素・第2の7(1):難病等により本邦での治療を必要とすることは、特に考慮する積極要素です。本事例は後遺症による障害があると記載され、本邦での治療と療養の必要性が正面から評価されたと読めます。
- 積極要素・その他:在日約25年8月に及ぶ生活の蓄積。来日が母の連れ子としてであり、不法な状態が生じた経緯に本人の選択がほとんど介在していない点も考慮されたと読めます。
- 第2の9:端緒は当局の摘発ですので、自ら出頭したことに当たりません。
- 消極要素・第2の5:不法在留は約11年6月。令和6年改定で明示的な消極要素とされましたので、同じ事情でも現在の評価は厳しくなり得ます。
- 消極要素・第2の6:不法残留という退去強制事由。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。
結論を分けた一線はどこか
出頭申告がなく、不法在留も約11年6月に及びながら許可されています。天秤を傾けたのは、本邦での治療と療養の必要性と、不法な状態に至った経緯に本人の意思がほとんど働いていない点であると読めます。同じ平成27年D類型の不許可第6事例は、永住者である母と同居していたものの、覚せい剤取締法違反で有罪となり不許可でした。母との関係という共通点があっても、素行に関する消極要素の有無で結論が分かれたと考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分のない事例ですので、2点を挙げます。
第1に、治療の必要性の立証です。診断名を記した書面だけでなく、本邦で治療を続ける必要性、本国での治療の可能性、日常生活における支援の必要性を、医師の意見と客観的な記録で示すことが要になります。症状を書き立てる必要はなく、必要性を示す構造を組むのが目的です。
第2に、未成年のときに親に連れられて来日した場合の評価です。本人が在留手続を選べる立場になかった事情は、不法在留の期間に対する評価を和らげる方向に働き得ます。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しませんので、来日の経緯は違反審査までに明らかにしておく必要があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋です。摘発で発覚し、不法在留も10年を超えるという条件だけを見れば厳しい事案ですが、本事例は許可されています。当事務所が担当した不法就労助長の事案も、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的な観点から交渉して手続を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
健康上の事情は、資料の組み立て方によって在留特別許可の判断に正面から届きます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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