平成27年・自らの志望で外国籍を取得して日本国籍を失い日本旅券で入国、不法入国でも日本人の配偶者等(3年)(D類型許可第3事例)
2026/08/07
事例の概要
日本国籍を失ったと気づかないまま日本の旅券で入国した例です。平成27年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)許可第3事例で、結論は許可です。違反態様は不法入国、端緒は出頭申告で、在日約32年、違反期間は今次入国以降の約9月です。在留希望の理由は、本邦に生活基盤があることです。特記事項には、自己の志望で外国籍を取得したことにより日本国籍を喪失したこと、法の不知により国籍喪失に気づかず日本旅券を使用して入国したことが記されています。刑事処分はありません。許可内容は日本人の配偶者等(3年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は改正入管法施行(令和6年6月10日)前、改定前ガイドラインの下での判断です。
- 積極要素・第2の2(1):許可された在留資格が日本人の配偶者等であることから、日本人との身分関係が判断の前提にあったとうかがわれますが、その内容は判明しません。
- 積極要素・その他:在日約32年という生活の蓄積。国籍を失った経緯が本人に認識されていなかったという主観面も、実質的に評価されたと読めます。
- 積極要素・第2の9:出頭申告。
- 消極要素・第2の5:違反期間は今次入国以降の約9月にとどまります。
- 消極要素・第2の6:不法入国という退去強制事由。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。
- 第2の3(ウ):公的書類の偽変造や不正受交付は消極要素ですが、本事例で用いられたのは真正な日本旅券であり、この要素に当たりません。
結論を分けた一線はどこか
在留期間が3年という比較的長い許可が出ています。天秤を傾けたのは、不法入国という外形が生じた原因が国籍法上の効果を知らなかった点にあり、本人が身分を偽ろうとしたのではないこと、そして在日約32年の生活基盤であると読めます。同じ平成27年D類型の不許可第2事例は、日系3世であると身分を偽って在留していた事案です。身分に関する齟齬が認識の欠如によるものか、意図的な偽りかが分かれ目と考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分のない事例ですので、2点を挙げます。
第1に、退去強制事由と主観面の関係です。入管実務では、退去強制事由の判断に故意や過失を要しないとする運用が長年踏襲されています。松村大介弁護士は、この運用の当否を正面から問う訴訟を現に係争中です。本事例で入管が法の不知という主観面を特記事項に記した点は、この論点を考えるうえで示唆に富みます。もっとも結論を断定できる段階ではありません。
第2に、立証の中身です。国籍を失った時期と経緯、外国籍取得の手続、その後の居住と生活の状況を示す資料が中心になります。手続は違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)、異議申出と進み、注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しませんので、提出は早い段階が望ましいところです。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋です。国籍の得喪に関わる事案は事情が個別的で、似た公表例は見つかりにくいものですが、可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な資料を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析して、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。身分関係の立証が難しい事案の経験がございます。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
国籍の得喪は、本人が気づかないうちに在留資格の前提を崩すことがございます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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