平成27年・日本人実父の育児放棄で児童相談所に保護、未成年後見人となった父方の祖母との同居で定住者(1年)(D類型許可第1事例)
2026/08/07
事例の概要
親に育てられなくなった子について、受け入れる体制が法的に固まった点が評価された例です。平成27年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)許可第1事例で、結論は許可です。違反態様は不法残留、端緒は出頭申告で、児童相談所の保護を経ています。在日約8年・違反約2年です。在留希望の理由は、事例集の表記では日本人父(未届)の両親との同居です。特記事項には、日本人実父の育児放棄により児童相談所に保護されていたこと、母は本国に帰国して交流がないこと、日本人実父の母が未成年後見人に確定し同居予定であることが記されています。刑事処分はなく、許可内容は定住者(1年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は改正入管法施行(令和6年6月10日)前、改定前ガイドラインの下での判断です。
- 積極要素・第2の2(1):日本人の実子であることは特に考慮する積極要素です。もっとも事例集は父を未届と記載しており、日本法上の父子関係の成否は判明しません。
- 積極要素:家族とともに本邦で生活するという子の利益の保護の必要性(令和6年3月改定で明示。参議院附帯決議14項)。
- 積極要素・人道上の配慮:第2の7が列挙するのは難病等の治療、本国情勢による帰国困難、無国籍で、本事例は列挙自体に当たりません。児童相談所に保護されていた児童であるという事情が人道上の配慮として考慮されたと読めます。
- 積極要素・第2の9:出頭申告。
- 消極要素・第2の5:不法在留は約2年。
- 消極要素・第2の6:不法残留という退去強制事由。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。
結論を分けた一線はどこか
天秤を傾けたのは、公的機関による保護の経緯という客観的な裏付けと、未成年後見人が確定して同居の見通しが立っていた点であると読めます。同じ平成27年D類型の不許可第4事例は、配偶者との生活を希望したものの、婚姻関係は破綻しているとされ、配偶者自身も退去強制手続中でした。同居を求める相手方との関係が法的にも実質的にも固まっていたかどうかが分かれ目と考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分のない事例ですので、2点を挙げます。
第1に、受入れ体制を法的に確定させることの意味です。同居の希望を述べるだけでなく、誰が法的な責任をもって養育するのかを手続として固めた点が判断の土台になったと読めます。児童の保護に関わる事案ですので、内容には抑制的に触れます。
第2に、公的機関の記録です。児童相談所の保護の経緯は、本人の置かれていた状況を客観的に示す資料になります。手続は違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)、異議申出と進み、注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しません。保護の経過と受入れの見通しは、早い段階で反映させる必要があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例は各年20件前後の抜粋で、許可された事案の全部ではありません。事情が特殊で似た例が見つからなくても、可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的な観点から交渉して婚姻と認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な資料を集め、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
誰が養育を担うのかを法的に固めることが、在留の主張を支える土台になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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