平成27年・子が認知を受けて定住者を取得しても母は不許可|被退去強制歴1回、父が本国に帰国していた事例(C類型不許可第2事例)
2026/08/07
事例の概要
子に在留資格があっても、母の在留が当然に認められるわけではないことを示す例です。平成27年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のC類型(外国人家族の場合)不許可第2事例です。違反態様は不法残留、端緒は母子での出頭申告です。母は在日約9年10月・違反約3年10月。子の欄には、本邦出生で不法残留、在日約4年10月・違反約3年10月と記載されています。刑事処分はありません。特記事項には、日本人の配偶者として在留中に同国人との子を出産したこと、子は父の認知を受けて定住者の在留資格を取得したものの父は他の同国人女性と婚姻して本国に帰国したこと、被退去強制歴が1回あることが記されています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は改正入管法施行(令和6年6月10日)前、改定前ガイドラインの下での判断です。
- 積極要素・第2の2(2):別表第二の在留資格(永住者・定住者等)を有する者との家族関係は、(1)に準ずるものとして考慮されます。もっとも本事例では子の父が本国に帰国し他の女性と婚姻しているとされ、家族としての結合の現状が積極要素として評価されにくい状況にありました。
- 積極要素・第2の2(3):子は本邦出生で在日約4年10月です。就学の記載はありません。子の利益の保護の必要性が明示されたのは令和6年3月改定です。
- 積極要素・第2の9:母子での出頭申告。
- 消極要素・第2の5:母の不法在留は約3年10月です。
- 消極要素・第2の6:不法残留という退去強制事由と、被退去強制歴1回。
結論を分けた一線はどこか
同じ平成27年C類型の許可第3事例も被退去強制歴1回でしたが、子の在日期間は約9年8月で、母子とも定住者(1年)が認められました。本事例の子の在日期間は約4年10月です。第3の判断手法に照らせば、被退去強制歴という消極要素を上回るだけの厚みが子の生活に備わっていたかどうかが分かれ目であり、加えて父が本国に帰国していたことで家族関係の現状を積極要素として示しにくかったと読めます。
弁護士のコメント
刑事処分のない事例ですので、2点を挙げます。
第1に、子に在留資格がある場合の主張の立て方です。子が定住者であることは出発点にすぎず、監護養育が現に母によって担われている実質を示す必要があります。同居の状況、家計の一体性、日々の養育の担い手を裏付ける資料が中心になります。一般的な整理であり、必要な資料は事案によります。
第2に、被退去強制歴がある場合です。過去の歴は動かせませんので、それを上回る積極要素を早い段階で積み上げるほかありません。手続は違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)、異議申出と進み、注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しませんので、出頭申告の前から準備を始める意味があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集に載るのは各年20件前後で、その年の判断の全体像ではありません。同じ組合せの不許可例があっても、それが自分の事案の結論を決めるわけではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的な観点から交渉して婚姻と認知を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議により、全件について不起訴処分を獲得しております。多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
子に在留資格があるかどうかではなく、監護養育の実質を誰がどのように担っているかが問われます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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