平成27年・被退去強制歴1回と同居の疑義で不許可|不法入国・出頭申告・婚姻約7月の事例(A類型不許可第2事例)
2026/08/06
事例の概要
消極要素が2つ重なると、出頭申告という積極要素では足りなくなります。平成27年分の事例集(出入国在留管理庁が公表)のA類型(配偶者が日本人の場合)不許可第2事例です。
違反態様は不法入国、端緒は出頭申告。在日期間・違反期間はいずれも約4年2月です。婚姻期間は約7月で、夫婦間の子はありません。刑事処分はありません。特記事項には、被退去強制歴が1回あること、同居・婚姻の実態に疑義が持たれたことの2点が記載されています。判断は令和5年改正入管法の施行前、現行ガイドラインの改定前のものです。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の2(1)(ウ):日本人との婚姻はありますが、期間は約7月にとどまり、子もありません。加えて同居の実態に疑義が持たれていますので、「相当期間共同生活をして相互に扶助し」という実質が認められず、この積極要素は立ちません。
- 第2の9(積極):不法滞在の事実を申告するため自ら出頭したこと。
- 第2の6(消極):不法入国という退去強制事由に加え、被退去強制歴が1回あります。過去に退去強制を受けた者が再び不法入国している経緯は、退去強制理由の反社会性の評価で重く働きます。
- 第2の5(消極):約4年2月の不法在留期間。期間そのものは長い方ではありません。
結論を分けた一線はどこか
同じ平成27年A類型の許可第4事例と比べると分かりやすい事例です。許可第4事例は同じ不法入国・出頭申告で、在日期間は約16年1月と本事例の4倍近く、婚姻期間は約1年5月、子もありませんが許可されました。
違いは2点です。本事例には被退去強制歴があり、婚姻・同居の実態に疑義が持たれています。ガイドライン第3は積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとしますので、出頭申告という1つの積極要素だけでは、この2つを上回るには足りなかったと読めます。
弁護士のコメント
第1に、被退去強制歴がある方の事案では、過去の経緯と現在の生活の違いを具体的に示す準備が欠かせません。同じ人が同じ違反を繰り返したという見え方のまま手続が進むと、他の事情が検討される前に結論が固まりかねません。前回の退去強制に至った事情、その後の期間、今回の入国と婚姻の経緯を、時系列で説明できるよう整えておく必要があります。
第2に、婚姻期間が約7月と短く子もない事案では、同居の実質を示す資料が結論を左右します。住民票、賃貸借契約書、家計の一体性を示す記録などを、違反調査の聴取が始まる前に整理しておくのが安全です。疑義はこの段階で形成され、ガイドライン注4により退去強制令書発付後の事情変更は原則として考慮されません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋です。被退去強制歴のある方の許可例も、平成27年のC類型許可第3事例のように現に掲載されています。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。
観光目的で来日された方が日本人女性との間にお子さんを授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、一旦は不受理とされた婚姻と認知を憲法的な観点から当局と交渉して成立させ、過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しました。
特殊詐欺の受け子として複数回の再逮捕を受けた事案では、取調べへの対応を徹底し、不当な取調べへの抗議を重ねて、全件について不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となるため、起訴前からの不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。接見の初動から公判の結審まで松村弁護士自身が全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐して、依頼者ご本人のために動く立場から通訳します。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応できます。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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