平成27年・出頭申告で刑事処分もないのに不許可|同居・婚姻の実態への疑義が決め手となった在日約13年9月の事例(A類型不許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
自ら出頭し、刑事処分もなく、過去に退去強制を受けた経緯もない。それでも不許可となった事例です。平成27年分の事例集(出入国在留管理庁が公表)のA類型(配偶者が日本人の場合)不許可第1事例です。
違反態様は不法残留、端緒は出頭申告。在日約13年9月のうち違反期間は約9年11月です。婚姻期間は約1年10月で、夫婦間の子はありません。刑事処分はなく、被退去強制歴の欄には該当なしを示す斜線が引かれています。不許可の事情として記載されているのは、同居・婚姻の実態に疑義が持たれた1点だけです。判断は令和5年改正入管法の施行前、現行ガイドラインの改定前のものです。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の2(1)(ウ):日本人との婚姻はありますが、同項が求めるのは法的な婚姻に加えて「相当期間共同生活をして相互に扶助し」という実質です。同居の実態に疑義が持たれた本事例では、この積極要素が立ちません。
- 第2の9(積極):不法滞在の事実を申告するため自ら出頭したこと。
- 第2の5(消極):約9年11月の不法在留期間。明示的な消極要素とされたのは令和6年3月改定です。
- 第2の6(消極):不法残留という退去強制事由。どの号に当たるかは条文で確認を要します。
素行不良(第2の3)に当たる記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
積極要素は出頭申告のみ、消極要素は不法在留期間と退去強制事由です。ここに婚姻の実質が加われば天秤は動き得たはずですが、その中心が崩れ、積極要素の柱が失われたと読めます。
同じA類型の許可第1事例は、在日約3年5月・違反約2年5月・婚姻約1年5月で、婚姻期間は本事例より短いのに許可されました。差は未成年の子の存在、すなわち家族生活が現に営まれていることを示す事情の有無です。ガイドライン第3は積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとしますので、婚姻の実質が示されない限り天秤は動きにくいと考えられます。
弁護士のコメント
第1に、同居・婚姻の実態への疑義は、この類型の不許可事例に最も多く現れる事情です。事実として同居していても、示す資料がなければ判断の場では存在しないものとして扱われます。住民票の異動履歴、賃貸借契約書、公共料金の契約名義、家計の一体性を示す口座の記録などを、時系列で切れ目なく並べる作業が要になります。必要な資料は事案により異なります。
第2に、争う段階です。手続は違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)、異議申出と進みます。疑義は違反調査の聴取段階で形成されますので、夫婦の説明が食い違わないよう早期に事実関係を整理しておくことが重要です。ガイドライン注4により退去強制令書発付後の事情変更は原則として考慮されません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集の掲載は各年20件前後です。同居の実態に疑義が持たれた事例が不許可側に並ぶことは、婚姻期間の短い方の申請に道がないという意味ではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。
不法就労助長罪に問われ退去強制の危機にあった女性の事案では、退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務の在り方を正面から問う訴訟を現に続けています。この事案では在留特別許可を得た後も、違反認定処分そのものの取消しを争っています。
観光目的で来日された方が日本人女性との間にお子さんを授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、一旦は不受理とされた婚姻と認知を憲法的な観点から当局と交渉して成立させ、過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となるため、起訴前からの不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。接見の初動から公判の結審まで松村弁護士自身が全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐して、依頼者ご本人のために動く立場から通訳します。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応できます。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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