平成28年・「人文知識・国際業務」で在留中に飲食店を経営し外国人を不法就労させ不許可|懲役1年6月・執行猶予3年・罰金100万円の事例(D類型不許可第5事例)
2026/08/06
事例の概要
自分の店で外国人を働かせたことが在留の可否を決めた事例です。平成28年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)不許可第5事例です。違反態様は不法就労助長、端緒は警察による逮捕で、在日約4年10月、違反期間の欄は空欄です。被退去強制歴の記載もありません。刑事処分は入管法違反により懲役1年6月、執行猶予3年、罰金100万円の判決でした(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。在留希望の理由は、雇用先で引き続き働きたいことでした。事例集は、在留資格「人文知識・国際業務」で在留中に飲食店を経営し、外国人に不法就労させたことを不許可の事情とします。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 消極要素・第2の3(イ):他の外国人の不法就労に関わる行為は、特に考慮する消極要素です。自ら経営する店での不法就労は、これに正面から当たります。
- 消極要素・第2の6:不法就労助長行為は入管法24条3号の4が退去強制事由を定めます。有罪判決を受けている点も重く働きます。
- 積極要素:第2の3が積極要素とする社会・経済・文化等の分野での不可欠な役割に当たると評価されていません。第2の2の家族関係の記載もありません。
- 第2の9の出頭申告には当たりません(警察による逮捕)。
結論を分けた一線はどこか
入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、全部執行猶予は除外されます。本事例で重かったのは、むしろ不法就労助長という行為それ自体です。同じ平成28年D類型の許可第8事例は、端緒が同じく警察による逮捕でありながら刑事処分がなく、日本人の実子として長く在留していました。
弁護士のコメント
2点を述べます。
第1に、不起訴の獲得です。執行猶予が付いても、不法就労助長は行為自体が消極要素として残ります。起訴前に不起訴処分を獲得できていれば、有罪判決という事実を生じさせずに済んだ余地があったと考えられます。執行猶予を最終目標に据える方針では在留の確保に届きません。
第2に、故意・過失です。雇った相手の在留資格や就労の可否をどこまで確認していたかは、刑事事件では故意や過失として争われます。他方、入管実務では退去強制事由の判断に故意・過失を要しないという運用が続き、責任主義の射程をめぐるこの論点は松村大介弁護士が現に訴訟で争っています。確認の経過を示す資料が入管手続での主張の基礎になります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
不法就労助長を理由とする公表事例には不許可が並びます。もっとも事例集は各年20件前後の抜粋で、この類型で許可が出ないことを示すものではありません。当事務所は、不法就労助長に問われた事案で在留特別許可を獲得しており、許可の後もなお違反認定処分の取消しを争っております。結果をお約束するものではありませんが、傾向は出発点であって結論ではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に至った女性の事案では、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を正面から問う訴訟を係争中です。この事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得しており、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
外国人を雇う立場に立たれる場合、確認の手順と記録が、ご自身の在留を守る備えになります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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